西洋と東洋の知能論が融合/SIG-AI「井筒俊彦と内面の人工知能」レポート記事掲載(動画公開)

西洋と東洋、そのクロスポイント

さまざまな立ち位置の参加者による多彩な議論が見られた

「西洋的モデルは物質世界と人間との間で情報の循環構造を構成します。これは行動などを通して、世界の中で自己を絶え間なく変化させていく、アポトーシスなモデルだといえます。これに対して東洋的モデルは『一なる全』とでも言うべき精神的世界と人間との間で、同様の循環構造を構成します。これは精神世界で自己を安定化させていく、ホメオタシスなモデルになります」(三宅氏)

その上で三宅氏は、このモデルを既存のエージェントアーキテクチャに当てはめ、キャラクターと環境をつなぐインフォメーションループとは別に、世界と人間を内面的につなぐ二重のループ構造を提示しました。これにより環境世界の中で自律的な振る舞いをみせつつ、内面世界において知能を形成していくキャラクターAIが作成できるのではないか……三宅氏はこのように分析します。

実際のところ、これまでキャラクターAIは行動生成のみに注力し、自己形成については考慮されてきませんでした。はたして、こうしたモデルが実装されたゲームが近い将来登場してくるのか。それはきわめて東洋的・日本的なゲームとなることでしょう(事実上、こうした研究が欧米には存在しないからです)。今後の関係各者の取り組みに改めて期待したいところです。

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