SIG-Audio #14 GDC17オーディオ報告会レポート

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世界最大級のゲーム開発者会議GDC。AAAからインディまでゲーム開発のさまざまな知見や情報が共有される、ゲーム業界の知の祭典です。中でもオーディオ分野は専用のトラックパスや、ゲームオーディオ限定のアワード「G.A.N.G.Awards」が実施されるなど、独特の雰囲気を保っています。

これに伴いIGDA日本SIG-Audioでも毎年、個別の報告会が実施されています。今年も5月31日にSIG-Audio#14「GDC17オーディオ報告会」がコロプラで開催され、約80名のゲームオーディオ関係者が参加し、3社5名の報告に耳を傾けました。なお、当日のアンケート結果がSIG-Audio公式サイトに公開されていますので、あわせてご覧ください。

セッション1
海外クリエイターから学んだサウンド開発レベルのスレッショルド〜GDC2017をジャンル別に厳選し、各セッションを振り返る〜
コナミデジタルエンタテインメント/金子貴紀氏・久保早瑠菜氏・國吉理応氏

金子貴紀氏(右)
久保早瑠菜氏
國吉理応氏

GDC2017で開催されたオーディオトラックセッション数は56本。これらを3名で分担しつつ、合計63本のセッションを聴講したコナミデジタルエンタテインメント。報告会のトップバッターとして登壇した金子氏・久保氏・國吉氏は、これらを大きくSE編・BGM編・ボイスオーバー編で分けて全体傾向を共有しました。

まずSE編では「大規模なフィールドレコーディングと実装の効率化」と「立体音響・空間演出の研究成果」が中心だったと語られました。中でも金子氏は「Boom Library」の制作者として知られるDavid Philipp氏の制作プロセスや、『バトルフィールド1』のサウンド制作に関するセッションが参考になったといいます。

BGM編は「レコーディングや演出・組み合わせ方など、目的にあわせた手法の選択」「インスピレーションのわかせ方」などの講演が中心だったとのこと。久保氏は『Fallout4』の楽曲制作に関するセッションで、「8割の定番に2割のオリジナリティを付け加える」という考え方が印象深かったと語りました。

ボイスオーバー編ではチュートリアルセッションやラウンドテーブルが充実しており、國吉氏は「業界に入りたての頃にこうしたセッションを聞きたかった」と振り返りました。またノーティドッグの制作プロセスが共有された講演「Realistic Performances in Games」が参考になったといいいます。

最後にSEではアセットの制作や実装では手法が確立化しており、応用に入っていること。立体音響では多チャンネル環境をいかにヘッドフォンで再現するかで取り組みに違いが見られること。BGM編ではインタラクティブサウンドへの取り組みが加速していること。ボイスオーバー編ではワークフローの確立が鍵を握ること、などの所見が語られました。

セッション2
音響情報をベイクする
セガゲームス/塚越晋氏

塚越晋氏

コナミデジタルエンタテインメントの3名がGDC2017におけるオーディオセッション全体の傾向を紹介したのに対して、セガゲームスの塚越氏は『Gears of War4』の環境音制作に関するセッション「Pre-computed environmental wave acoustics」に絞った報告を行いました。なお、本講演は資料・動画共にGDC Vaultで無料公開されています。

セッションでははじめに現状のゲーム音響の課題共有から始まりました。サウンドの振る舞いがより多彩になっているものの、コンピュータのリソースは限定的で、正確な音響シミュレーションはコストが高いのが現状です。こうした中、デザイナーに対してクリエイティブな表現を可能にする環境をどのように整備するかが大きな課題となっています。

こうした問題意識から、『Gears of War4』で制作された内製ツールが「Triton」です。サウンドチームは本ツールを用いて、ジオメトリ情報をベースに音響パラメータをあらかじめベイクするアプローチを選択しました。ベイクされた音響データはサウンドミドルウェアのWwiseむけパラメータに変換され、リバーブや遮断を動的に制御したといいます。

音響パラメータをゲーム内世界にベイクするには、はじめに各地点での音響データを測定する必要があります。本作ではナビゲーションメッシュを利用してプレイヤーズブロブを自動配置し、各地点で音響シミュレーションを実施。各ブロブに対して「obstruction」「occlusion」「Wetness ratio」「Decay rate」の知覚パラメータが測定されました。

もっとも知覚パラメータは100MBにも及び、納期の問題などもふまえて、実装はそこから簡略化されたものになったと言います。その一方で「ゲーム音響があまりにリアルすぎるのはゲームとしてどうなのか」という新たな問題も発生。最終的にダイナミックレンジやリバーブなどを修正し、サウンド版「不気味の谷」に陥らないように工夫したと説明されました。

セッション3
「最先端のInteractive Musicとその未来」
スクウェア・エニックス/岩本翔氏

岩本翔氏

報告者の中でも唯一のGDCスピーカーをつとめたスクウェア・エニックスの岩本翔氏。IGDAスカラーシップでGDC2011に初参加し、3回目でスピーカーを務めることになりました。講演内容「Epic AND Interactive Music in FINAL FANTASY XV」は会場で大絶賛を受け、国内メディアからもレポート記事が掲載されています。

もっともテキストのみのレポートでは内容に限界があります。そのため岩本氏ははじめにMAGI(FF15でBGMがインタラクティブに遷移することを可能にするサウンドシステム)のデモを実演。その上で「あらゆる拍子やテンポ変更に対応できる」といった、MAGIのコンセプトについて改めて解説しました。

続いて紹介されたのがGDC2017であきらかになった「MIDIと録音のハイブリッド」というインタラクティブミュージックの新潮流です。岩本氏は『Get Even』『Plants vs Zombies Heros』『MAFIA III』の講演事例を紹介しつつ、MIDIによる楽曲転調や楽曲のモジュール化とWwise上での管理といった講演ポイントを説明しました。

最後に岩本氏はGDC Vaultやレポート記事などを通して、日本でもある程度の情報が取れる中、改めてGDCに行くメリットについて持論を展開しました。岩本氏が強調したポイントは「質問ができること」です。多くのオーディオセッションで積極的に質問をしたところ、他の聴講者から感謝のメールをもらい、非常に嬉しかったと岩本氏は語ります。

講演者に対して直接質問ができ、講演を一緒に作り上げていける。そして、その内容がGDC Vaultを通して世界中に発信され、世界中のゲーム開発者で共有されていく。それがGDCに参加する最大のメリットだと語りました。報告会の終了後は懇親会も実施され、夜が更けるまでさまざまなゲームオーディオ談義が繰り広げられました。