CEDEC2017スカラーレポート①加藤木健太

東京工科大学 大学院の加藤木健太です。「視線」と「ゲーム」を研究中です。
VFX、プランニング、視線誘導に関わるUIなどの経験をしてきました。

スカラーシップでは、「ゲーム会社スタジオツアー」と「CEDEC」を4日間で行います。
それぞれ、得られた経験が大きく異なるので、分けて記述していこうと思います。

ゲーム会社スタジオツアー

1日で3社も訪問する濃密なスケジュールの中、それぞれの社風と社員の経験談から、ゲーム業界を覗くことができました。また、社員とのディスカッションも重視された構成になっており、具体的な悩みや業界水準が確認できました。

中でもジープラ株式会社の「ターゲット」の話はすごく身近で印象深かったです。今回は「snapchat」を例に解説されました。snapchatはLineによく似たSNSです。大きな違いとしてチャットの履歴が残らない点があります。この「履歴が残らないline」で喜ぶターゲットはどこでしょう? という質問がなされました。自分が使うなら不便だなと思っていると、すぐに答え合わせになりました。答えは「女子中高生」で、「恋話」と「いじめ」に向くからでした。

私はこれまで、自分が心地が良いと思うものをコンテンツに反映してきましたが、人の層は広いと体感できました。自分が実際に不便だと感じるものでも、ターゲットによっては真逆で、便利だと感じる人がいるとわかりました。

株式会社CYBIRDと株式会社 Aimingでは個別相談がありました。自分は視線を研究する過程で、UIデザイナーの業界水準に興味がありました。UIデザイナーはまだまだ少ない状況で、求められるスキルも高く、視線誘導ばかり勉強していても活躍できないと感じました。

CEDEC

講演では、目玉である任天堂とUI、VRを中心に聞きに行きました。任天堂の講演は(基調講演を除き)CEDEC史上初となるもので、会場は常に満員でした。会場前には長蛇の列ができ、廊下は熱気で気温が上がるほどの人気でした。

任天堂は「ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド」の講演を行いました。その中で、箱庭ゲームが得意な日本人でも親和性を持てるオープンワールドの作り方を解説しているセッションがありました。

オープンワールドの中で強制感や一本道感を感じさせず、作り手の見せたいものを見せるための誘導について語られており、「明かりに惹かれる昆虫のように、プレイヤーを引きつける引力が発生するポイントを配置した」という説明が印象深かったです。引力とは遠くからでも発見できる煙や塔、ユーザーが喜ぶ要素などの意味で、これらを配置することで、ユーザーを強制感なく引き寄せるというものでした。

このような飽きさせない工夫が常に行われており、視界に設置し続けることで、オープンワールド特有の飽きがこないことに対して、すごく納得がいきました。また「引力」や「光に引き寄せられる虫」という言葉のセンスにも感動し、プレゼンの勉強にもなりました。

UIデザインについて、全体のワークフローを具体的に知ることができた講演が「アイドルマスターでのPhotoshopを駆使した効率的なUIデザイン手法」でした。私がチーム制作でUIパーツを作る際は、実装のスピードを優先し、管理については後回しになりがちでした。製作が長期化すればするほど苦労し、自分しか「どこに何があるかわからない」状況を作りだしていました。今回のセッションはそのような状況を作り出さないための管理方法が秀逸でした。

例えば「UIのパーツをレイアウトPSDとパーツPSDで分け、それらをUI画面フローPSD内で、1つにまとめる」ということを行っていました。このようにすることで、パーツの差し替えがすぐに可能になるだけでなく、デザインの統一や同じ意味をもつUIを発見することが可能になります。

CEDECでは、2~3年かけて開発するゲームを前提にしている知見が多く、学生の短期制作ではなかなか活用しにくいものが多いと感じました。そんな中、本セッションで紹介された知見は、自分でもすぐに採用できるところが魅力的でした。