TGSスカラーシップレポート⑤ 加藤孝章

TGSスカラーシップ2017に参加させていただきました、東京理科大学院建築学専攻の加藤孝章と申します。ゲームではなく、建築畑からの出身ではありますが、来年の進路がゲーム業界に就職することが決まったため、その見識を広めたいと思い参加しました。最初に、このスカラーシップを紹介してくれた友人に感謝の意を表明したいと思います。

1日目のスタジオツアー

このスカラーシップの一日目には、ゲーム会社に赴き、制作スタジオを見学させていただける機会がありました。就職活動の一環で様々な企業へ見学に行くことはありましたが、新たにあまた様、DeNA様、Aiming様のスタジオへ行くことで、ゲーム業界の雰囲気を肌で感じることができました。

この三社を見学させていただき感じたのは、同じゲーム会社であっても、考え方がそれぞれ異なり、その様子がスタジオツアーでのイベントや、雰囲気に出てきていた部分でした。人材に対しての考え方が特別であったり、実際制作されている社員の方とマンツーマン形式で会談をしたり、グループワークで簡易的なボードゲームを作ったりと、それぞれが大事にする部分が垣間見ることができました。それらの個性あるイベントを通しながら、社員の方々に様々な質問をすることで、ゲーム業界に入る前に知っておくべき常識や、技術的に足りていない部分を、実践的に再確認することができ、とてもいい機会となりました。

2~3日目のTGSビジネスデイ

今まで一般日でTGSに赴くことはありましたが、ビジネスデイへの参加は初めてでした。まず何より会場内が一般日と比べとても空いていることは、特筆すべき点でした。そのため、一般日なら普通できないような大作タイトルをプレイすることができ、これからのゲームはどのような姿をしていくのかが見られました。過去からあった強力なIPをさらに発展させたゲームもありましたが、個人的に今後の展開に期待を寄せたのが「DETROIT」でした。CGの技術が向上し、また、ゲームをする人々が多様化する中、まるで映画を観ていることを楽しむようなゲームを、新しいIPとして大々的に宣伝している様子は、ゲームそのものの在り方が広がる瞬間を見ているようでした。

また、VRに関しても興味深い点がありました。家庭用ではなく、アミューズメント施設用に商品を販売している企業が多く、どのようにVRのゲームが私たちの手元に普及していくかが楽しみになりました。VRのような、臨場感の高いメディアを最適に利用した、新しいゲームの誕生が楽しみです。

そして何より、ビジネスデイのみのイベントとして、「グローバルビジネスサミット」や「ゲーム大賞発表」に参加できたのは、今までにはできなかった貴重な体験でした。「グローバルビジネスサミット」では、「日本におけるe-Sportsについて」の講演を行っており、海外と日本のe-Sports有識者を呼び、今後の可能性と、日本での展開の方法について、肯定的な立場で語っていました。ゲームというエンタテイメントが、今後の社会においてどのような位置づけになっていき、人々の周りに発信されるかというのは、今後制作側で関わる身としては、欲していた情報でした。ゲームそのものの更なる発展を楽しみにしている私としては、モチベーションの上がる講演でした。

また、「ゲーム大賞発表会」では、今までゲームのパッケージの右下にただあったシールが、このような会を通し、選ばれ貼られていった光景を目のあたりにすることができました。どのようなゲームが経済的・社会的に影響を与えているかが、この発表会を見るだけで知ることができました。この会の賞の中で最も印象的だったのが、「ゲームデザイナーズ賞」でした。「INSIDE」という、タイトルは知っていましたが、個人的にあまり興味を持っていなかったゲームが、多くのクリエイターの共感を呼んでいたという事実に立ち会うことができたのは、私のゲームに対しての価値観を変化させる出来事でした。彼らのゲームに対する審美眼に近づけるよう、今後の学びの目標にしていきたいと思いました。

4日目のインディーズゲーム

最終日である4日目はTGSに一般日に参加するものとなりました。今回のスカラーシップで、3日目の「センスオブワンダーナイト」など、多くのインディーズゲームの制作者の方々と関わる機会があったこともあり、その日はインディーズゲームのブースを多く回ることになりました。大手の企業が作っているようなゲームとは異なり、制作者のやりたいことが如実に反映されている、個性あふれるゲームが多くありました。少人数で作っていながらも、とても面白いゲームが数多くあったことを見ていると、大手の作るゲームと、インディーズの作るゲームが、段々と差別化されていき、より純度の高いものになっていくのではないかと感じました。個人での開発が容易になってきた現在では、ゲームそのものの楽しさをより高めていかないといけないのだと感じました。

スカラーシップを終えて

来年、ゲーム業界へ就職するまでに、プログラムやデザインなど、様々なことを学ばないといけないと漠然に思っていました。このスカラーシップを通し、自分のゲーム業界での役割や、制作者としてどうあるべきかをより具体的にイメージできました。そのお陰で、何を優先的に学び、5年後、10年後の、なりたい制作者像のための道筋を立てることができました。このスカラーシップでお世話になりましたigda日本の関係者の皆様と今回のスカラーシップで同行しましたメンバーの皆様から、いい刺激をいただくことができ、心から感謝いたします。来年以降、同じゲーム業界で再開できることを楽しみにしております。