世界は小さな物語を小さく語りはじめた~SIG-GS「世界のビジュアルノベルゲームは今。【第2回】」レポート

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NPO法人IGDA日本SIG-GameScenarioはヒューマンアカデミー秋葉原校で2018年8月6日、ゲームライターの德岡マサトシ氏を講師に迎えて、セミナー「世界のビジュアルノベルゲームは今。【第2回】」を開催しました。徳岡氏はビジュアルノベルゲームのトレンドを3分野4系統に分けて分析。「海外のビジュアルノベルゲームは戦争などの大きな物語をそのまま語るのではなく、より個人の体験に引き寄せて、小さな物語として語り始めている」と紹介しました。

世界のビジュアルノベルゲームは今。【第1回】」でアクティブゲーミングメディアの水谷俊次氏が解説したように、海外ではビジュアルノベルゲームをアドベンチャーゲーム全般として捉え、選択肢のかわりに独自のゲームメカニクスを組み込みつつ、個性的なストーリー体験を提供するタイトルが人気を博しています。徳岡氏はそこから一歩踏み込み、2010年代の主要タイトルを引用しながら、より幅広い視野でビジュアルノベルゲーム全般のトレンドを考察していきました。

そこで得られた知見は、「日本でビジュアルノベルゲームは『キャラクターの立ち絵+背景+メッセージウィンドウ』を用いて、選択肢付きの分岐型ストーリーを提供する例が主流だが、海外では『テキストを使用しない』『プレイヤーの一人称視点で物語を進行させる』など、UI/UXの多様化が進んでいる」「戦争などの大きな物語は、大きな視点でゲーム化するだけでなく、個人の物語に引き寄せ、小さな物語としてもゲーム化できる」とまとめられるでしょう。

一方で国産タイトルにも、AIボットと会話する「どこでもいっしょ」や、田舎でスローライフを体験する「ぼくのなつやすみ」など、先駆的な作品が多々存在すると指摘する徳岡氏。その上で自身もソーシャルゲームのシナリオライターを手がけている立場から、「日本ではシナリオライターとスクリプターの分業化が進みすぎている」と指摘。テキストの効果的な表示方法をはじめとして、本来ビジュアルノベルゲームの開発手法は日本に一日の長があるはずで、ワークフローの見直しが求められると補足しました。

以下、本レポートでは講演中に引用されたタイトルの紹介を行っていきます。公開済みのスライドと合わせてご覧ください。

古典的アドベンチャーゲーム

ミステリーハウス(1980年)

他の7人の捜索者から身を守りつつ、館に隠された宝石を見つけ出して、無事に館から脱出することがゲームの目的。テキストベースでの表示が一般的だった中、他に先駆けてビジュアルベースでの表現を確立し、一斉を風靡した。米シエラオンライン製作。

マニアックマンション(1988年)

マッドサイエンティストが住む館に囚われた恋人・サンディを救うため、主人公デイブと仲間達が命がけの救出作戦に挑戦していく。カーソルを移動してコマンドをクリック→画面上をクリックといった具合に、ポイント&クリックとコマンド入力が併用されている点が特徴。製作は米ルーカスフィルム。

Grim Fandango(1998年)

旅行代理店の営業マンで、死神のマニュエル・カラベラとなって、顧客の魂を冥界に送り届けることがゲームの目的。タイトルは「Grim Reaper(死神)」+「Fandango(メキシコ音楽)」の造語で、メキシコ文化をベースとした世界観が特徴的。2017年にPS4でリメイクされ、初の日本語版がリリースされた。米ルーカスアーツ製作で、ディレクターは後にダブルファインを設立するティム・シャファー。

Escape from Monkey Island(2000年)

人気シリーズ「モンキーアイランド」の第4弾で、初の3DCG作品。主人公はシリーズでおなじみの、海賊にあこがれる青年カリブラン・スリープウッドで、陰謀によってメレー島総督の地位を奪われた妻アリーネの地位回復のために、さまざまな冒険を繰り広げる。米ルーカスアーツ製作。

①ポイント&クリック系

マウス操作で画面の一部分をクリックし、会話をしたり、仕掛けを解いたりしながら、ストーリーを進めていくゲーム。近年ではテキストを廃しつつ、ユニークな世界観や謎解きを通して、プレイヤーに物語体験を提供するタイプのゲームが増加している。

マシナリウム(2009年)

主人公はスクラップとして捨てられていたロボットのジョセフで、街を爆破しようとするBlack Cap Brotherhoodを妨害しつつ、ガールフレンドのベルタを捜索していく。本作を開発したアマニタ・デザインはチェコのインディゲーム会社。

サモロスト3(2016年)

主人公は宇宙ノームで、空から降ってきた魔法のフルートの力を使って宇宙を旅しつつ、フルートの出目を探索していく。特色の異なる9つの幻想的な世界での冒険が描かれる。粘土で山を作ってPCに取り込み、デジカメの写真を加工したテクスチャを張り付けるなど、独自のワークフローが特徴的。制作は「マシナリウム」と同じアマニタ・デザイン。

Tiny Echo(2017年)

1つ目の少女を操作して、絵本のような世界を旅しつつ、13通の手紙を届けていくゲーム。開発したMight and Delightはスウェーデンのインディゲーム会社。

The Last day of June(2017年)

主人公は恋人ジューンを交通事故で失ったカール。残された肖像画の力で過去に関与する力を得たカールは、事故にかかわった人々の行動を変えつつ、事故の原因を取り除いていく。開発したOvosonicoはイタリアのインディゲーム会社で、ディレクターは「Shadow of Dammed」を手がけたMassimo Guarini。

返校(2017年)

1960年代の台湾に吹き荒れた、国民党政権による白色テロがモチーフのホラーゲーム。主人公は男性教員に憧れる女子高生のレイで、人間のエゴが当時の社会体制と結びつき、悲劇につながっていく様が描かれる。開発したRed Candle Gamesは台湾のインディゲーム会社で、ローカルな文化や歴史を取り入れたことで、世界的なヒットにつながった。

RPGツクール系

RPGツクール(海外ではRPG Maker)はKADOKAWAから発売されているRPG製作ソフト。近年では戦闘要素を廃したパズルアドベンチャーのプラットフォームとしても活用されている。国内外でさまざまな作品が登場し、互いに影響を与え合っている。また、国産タイトルではネットの実況プレイを介して人気を博したものが多い。

コープスパーティー(1996年)

見知らぬ高校に飛ばされた5人の高校生を操作して、さまざまな怪奇現象をさけつつ、元の世界に戻ることが目的。RPGツクール上で制作されたパズルアドベンチャーの草分け的存在で、メディアミックスや家庭用ゲーム機への移植などを通して、息の長いタイトルになっている。制作は日本のゲーム制作集団、チームグリグリ。

ゆめにっき(2003年)

主人公の少女を操作して「夢の中」を歩き回るという前衛的な内容で、明確な目的や戦闘、ストーリーなどは存在しない。制作者は日本人のささやまで、ウォーキングシミュレーターの先駆け的存在としても読み解ける作品。

魔女の家(2012年)

主人公は金髪で三つ編みの少女ヴィオラで、魔女の家と呼ばれる巨大な邸宅から脱出することが目的。壁紙やメモを手がかりに謎を解きながら進めていく。フリーゲームとして公開されている。制作は日本人のふみー。

To the Moon(2011年)

ゲームの主人公は人生最後の願いを、深層心理の中で叶える仕事を手がけるエヴァとニール。今回のクライアントは「月に行きたい」という老人で、願いを叶えるために、老人の人生をさかのぼっていく。開発は米Freebird Gameで、アニメ版の制作も進行中。

A Bird Story(2014年)

紙飛行機を飛ばしては空に思いをはせる少年が、傷ついた小鳥を助けた後、共に遊んだり、小鳥を取り上げようとする大人達から逃走したりする・・・というストーリー。制作者曰く「インタラクティブなドット絵アニメーション」で、テキストを廃しつつ、濃厚なストーリー体験を提供している。「To the Moon」と同じFreebird Gameによる作品。

path out(2017年)

シリア難民のAbdullah Karamによる自伝的作品。シリアからトルコへの脱出行が、制作者本人の動画インサートと共に展開される。制作者と共にプレイしている感覚になる、ユニークなゲーム体験が特徴。