CEDEC2020スカラーシップ体験レポート⑨ 西田 拓央

今回IGDAスカラーシップCEDECコースに参加させていただきました、西田拓央です。

今年のCEDEC2020はオンライン開催となりましたが、インタラクティブセッションやワークショップなどの展示部分を除き、オフライン開催時と同様に様々な講演を拝聴させていただくことができました。オンライン開催への移行に伴い、講演中でも気軽に質問ができるライブチャット機能が新たに導入されていました。講演の序盤に1から3の数字を用いて聴講者の職種アンケートを行われていたハル研究所様の講演が印象深かったです。ちなみにそのアンケートのコメントを見る限りでは、エンジニア約8割、学生約1割、その他約1割といった割合で講演に参加されていました。

特に興味深かった講演は、任天堂株式会社様の「『リングフィット アドベンチャー』~新しいデバイスのインタラクションをエフェクトで~」です。フィットネス運動を題材としたゲームでは情報としてなるべく誤解のないフィードバックをしなければいけない中で、世界観と機能性を両立させるために様々な工夫がなされていました。アナログな入力に対してアナログなインタラクションを返すことによって、フィードバックの解像度を向上させるというプロセスは、今後も市場規模を拡大させると思われるxRデバイスを用いたインタラクティブコンテンツにおいても同様に必要になると思いました。

今年のスカラーシップではスタジオツアーに代わり、ゲーム業界のクリエイター様に話を伺うオンライン交流会が実施されました。次世代ゲーム機が今年発売されるということで、それに関連した話をひとつ紹介します。

昔と比べてゲーム機のマシンスペックが向上し、ゲーム的なこと以外の様々な体験を表現することができるようになってきました。今までは「人間の行動のどういうところが面白いのかを分析して、そのコアとなっている面白い部分を限られた処理能力の中でいかに再現するか」というのがゲームデザインでした。これからは技術的な問題で削ぎ落とされていた要素もすべて取り込むことができるようになり、「写実的な表現をどのように活用するか」についても考慮する必要が出てきます。しかし、ゲームデザインにおける発想の仕組みそのものに変化はありません。こうした点でこれからも重要になるのが「体験の言語化」であると考えられます。面白さがどこから生まれていて、どういう状況がその面白さを生んだのかを言語化して抽象化することで、写実的な表現の域にも応用の幅を広げ、ゲームならではの面白さの素材を生み出すことができると考えられます。

このような話をお聞きして、ゲームコンテンツの情報量が増加することに伴い、ゲームデザイナーにおいては色んな体験を言語化する必要性がさらに増し、技術側においても「抽象化された体験をどのように表現するか」にますます尽力する必要性が生じると思いました。また、表現できる幅の中から何を選択するかの価値も高まっていると感じました。

お話してくださった水野さん、鈴木さんありがとうございました。

これらの学びを活かして今後もスキル向上を目指して活動していこうと思います。

このような貴重な機会を設けてくださったIGDA Japan様、小野様、長久様、鈴木様、交流会に来てくださったゲーム業界関係者の方々、そしてスカラーシップメンバーの皆様、この度は本当にありがとうございました。

芝浦工業大学 工学部 情報工学科 西田拓央