TGS 2025 スカラーシップ体験レポート⑤島田 睦生

電気通信大学大学院情報理工学研究科1年の島田睦生です。Unityを使ったXRアプリの開発や、Blenderによる3Dモデル制作を行っています。

このたび、IGDA JAPAN様のスカラーシップに採択され、東京ゲームショウ(TGS)2025にて4日間にわたり自作ゲームを出展しました。また、IGDA JAPAN様のご支援により、制作メンバーの岡部透也も展示補助として参加し、2人で展示を行いました。

出展作品

今回出展したのは『Sketch Knights』という、空中に剣と盾を描き、それを装備して戦うXRアクションゲームです。

制限時間内に自由な発想で武器を手描きし、そのままバトルへ突入する。創る力が、そのまま戦う力になる。新感覚の描画型XRチャンバラです。制作期間は約2週間、4人チームで制作しました。

展示の学び

安全性

VR機器を装着して遊ぶ際の安全性を確保できました。

本作品はもともと、VR環境で全方位から敵が攻めてくるバトルゲームでした。しかし、TGSでの展示にあたっては、限られたスペース内で安全に体験してもらう必要がありました。

そこで、2つの改良を行いました。1つ目はARバージョンへの変更、2つ目は敵の出現方向を前方のみに制限したことです。展示スペースではVRだと周囲が見えず、他の来場者や什器に手が当たる危険がありました。ARに切り替えることで周囲の視認性を確保し、さらに敵を前方のみに出現させることで、腕を大きく振っても安全に遊べるようになりました。

この改良により、TGSの4日間を通して接触事故は一度も発生せず、安心して体験を提供することができました。

集客

「一目でどんなゲームかわかる工夫」が集客に大きく影響しました。

IGDAブースでは複数の学生作品を展示しており、各自がチラシ配布や声かけで来場者を誘導していました。私たちも「学生が作ったVRゲームです」と呼びかけていましたが、短時間で内容を伝えるのは難しく、足を止めてもらえないことも多くありました。

TGS最終日、チラシがすべてなくなってしまった際、代わりにVR機器を手に掲げ「VRゲーム遊べます!」と呼びかけてみました。すると、それまでよりも明らかに多くの人が興味を示し、立ち止まってくれるようになりました。このとき、「見た瞬間に内容が伝わること」の大切さを実感しました。

改めて会場を見渡してみると、多くのブースにおいて、大きなパネルを設置したり、登場キャラクターの衣装を着たスタッフが立っていたり、世界観を感じられる飾りつけが工夫されていました。
私たちの場合も、VR機器そのものを掲げることで、ゲームのジャンルを直感的に伝えることができたのだと考えています。 この経験から、「展示では一目で内容が伝わる視覚的要素を用意することが、最も効果的な集客につながる」と学びました。

他ブースの試遊

TGSではさまざまなゲームを試遊しまして、その中でも特に印象に残ったのが『ニアピンGO』です。

このゲームは、Apple Watchを装着し、腕を振るだけで遊べるゴルフゲームです。

コースは現実の街。目的地を設定し、その場で腕を大きく振ってスイングすると、見えないボールを打つことができます。そして、Apple Watchに表示された落下地点まで実際に歩いて移動し、再びスイングを繰り返す。日常の移動そのものがプレイ体験になるという、ユニークな仕組みです。

特に魅力的だと感じたのは、「画面を見ずに全身を使って遊べる」点です。ディスプレイやコントローラーを意識せず、身体の動きそのものでゲームを進められるのがとても新鮮でした。 私は普段XRゲームの制作を行っていますが、VR機器を装着することで、プレイヤーが自然と全身を使って没入できる点を大切にしています。ニアピンGOとXRゲームは、どちらも「画面を意識せず、身体全体で遊ぶ」という共通点を持っており、あらためて身体性を生かしたインタラクションの面白さを感じました。

おわりに

TGS2025への出展は、自分の制作物を多くの方に体験していただける貴重な機会でした。展示を通じて、開発だけでは得られない学びを多く得ました。これからも多くの人を楽しませる作品の制作を続けていきます。