時と存在はなぜ表裏一体なのか/SIG-AI人工知能のための哲学塾 東洋哲学編 第参夜「仏教と人工知能」レポート

主体的時間の創造に必要な2つのアーキテクチャ

第二部終了後、各グループで議論の概要を紹介

もっとも、仏教ではこうした因果律から超越し、悟りを得ることで人は仏になれると説きました。その一方で今の人工知能とは、最初から一切の煩悩を持たない、悟りきった存在だといえます。つまり、これからの人工知能は、自ら煩悩を得て世界の見方に色をつける力が求められる……。これは、過去の哲学塾でも何度も指摘されてきた事柄です。そして、実際の開発現場では、これを工学的アプローチでどのように実装していくかが問われることになります。

ポイントは2点です。第1に複数のコンテクストを同時に走らせておき、必要に応じて特定のコンテクストを選択して実行するような仕組みを構築すること。そしてもう1つは、過去と現在の思考をあわせもつ、時間軸を持つ存在として人工知能を構築することです。三宅氏は前者を「無意識インターレース型アーキテクチャ」、後者を「生成・融合・減衰型のアーキテクチャ」と名付けました。そして、各々のモデル図を示しました。

西洋哲学が20世紀になって到達した思想に、東洋哲学は800年も前に到達していた……。この事実には改めて驚かされるものがあります。その一方で東洋哲学は「悟り」という行為に代表されるように、きわめて属人的・直感的であり、人工知能の開発につながることはありませんでした。だからこそ、両者は互いに補完関係にあるといえます。三宅氏の唱える西洋哲学と東洋哲学の接点が生み出す人工知能がどのようなゲームを生み出すか。それはゲーム業界全体に提示された課題だといえそうです。

次回の人工知能のための哲学塾は「龍樹とインド哲学と人工知能」をテーマに、2017年9月27日に開催予定です(詳細はこちら