デジタルからくり装置づくりワークショップ in 本郷 開催レポート

IGDA日本は「デジタルからくり装置づくりワークショップ in 本郷」を2017年11月3日(金・祝)、東京大学情報学環オープンスタジオで開催しました。

ワークショップは午前と午後の二回に分けて行われ、合計で15名が参加しました。参加者は小学4年生から高校1年生まで多岐にわたり、お子さんと共に引率に見えられた保護者の方が参加されるなど、和気あいあいとした雰囲気で行われました。

個人ではなく集団による協業体験を提供

昨今、文部科学省による初等中等教育段階でのプログラミング教育推進を背景に、さまざまな企業・団体がイベントやワークショップを開催中です。もっとも、これらのイベントの多くは、下記のような狙いで開催されています。

・個人による開発体験や、それによる学び
・ワークショップ向けに最適化されたツールや教材の活用
・プログラミングを主眼に置く

これに対して本会は、ゲーム開発者のコミュニティであるIGDA日本が主催する特性を踏まえ、下記の狙いでデザインされています。

・集団での開発体験や、それによる学び
・プロのゲーム開発者が使用するツールや、それを用いた教材の活用
・プログラムは行わず、コンテンツ制作を主眼に置く

この狙いのもと、ワークショップはゲーム開発エンジンのUnityとGoogle Documentを併用して行われました。

自由な発想でドミノ作り

ワークショップはまず、レジュメの確認や参加者アンケートをGoogle Document上で行うところからスタートしました。参加者の中には、マウス操作は得意でもキーボード入力は不得手な者がおり、保護者がかわって入力するなどの光景も見られました。

続いて実際のワークショップでは、Unityを使用した「ドミノ倒しワークショップ」と、指定の用紙にクレヨンでキャラクターを描き、PCのカメラを介してキャプチャしてデータ化する「お絵かきワークショップ」が並行して行われました。

「ドミノ倒しワークショップ」はサンプルのステージを各自が改造しながら、オリジナルのステージを作成するというものです。サンプルステージのスタート地点とゴール地点には、それぞれボールが配置されており、ドミノの動きを次のステージに伝えられるようにデザインされています。これにより、参加者全員のステージを連結させると、一本の長いドミノ倒しを作ることができます。

ちなみに、ドミノがきちんとつながる限り、どのようなカスタマイズを行っても自由です。参加者の中にはドミノの大きさを変えたり、ぎりぎりドミノが倒れるように配置を工夫したり、ボールの大きさや形状を変えたりするなど、自由な発想によるカスタマイズがみられました。

「自分の環境では動いたのに」問題に翻弄

また「お絵かきワークショップ」で作成したキャラクターデータは、そのままUnityのステージ上で配置することが可能です。これによりお絵かきというアナログのデータがデジタル化され、インターネットを経由してゲームエンジン上で活用可能になる仕組みを感覚的に体験できます。こちらは特に小学生の参加者や、保護者と共に付き添いで訪れた小学生低学年の児童に人気でした。

ワークショップの最後は、各々の参加者が作成したステージを連結し、長い一本のステージにしたものを準備し、プロジェクターを用いた鑑賞会で締めくくられました。

もっとも、ぎりぎりまでステージの改造を続けた結果、データのアップロードが間に合わなかったり、自分のPC上ではきちんと最後までドミノが倒れたものが、いざ連結してみると途中で止まってしまったりと、想定外のトラブルが多発する事態もみられました。そのたびに参加者から歓声やため息が上がるなど、最後までワークショップは盛り上がりました。

成果物はAndroidアプリとして共有

今回の成果物はUnityからAndroid OSむけのアプリケーションとして出力され、クラウドサーバからダウンロードすることで、手持ちのAndroid端末で再生できます。また、ステージデータも同様にアップロードされ、希望者は自宅のPCにUnityをインストールすれば、作業を再開させられます。

最後に主催者から「学校の勉強は個人単位で行いますが、社会に出るとチームで仕事を進めます。その際にデジタルツールを使うと、協業がよりスムーズに行えるようになります。今日のワークショップを通して、能力や趣味嗜好がバラバラな集団が協力し、一つの成果物を作ることの重要性や意味を理解してもらえれば幸いです」と説明され、終了となりました。

本ワークショップは公益財団法人中山隼雄科学技術文化財団の助成で開催されました。IGDA日本では2016年から本ワークショップを開催しており、今後も日本全国の会場で実施していく予定です。(小野憲史)

※受け入れ希望の施設・団体などがありましたら、4ng[at]igda.jpまでご連絡ください。