ガンダム・マクロス世代のクリエイター
――それにしても、先ほどのアドベンチャーゲームは、川瀬さんが自分で作られたんですよね。
川瀬:そうですね。本業の傍らにやっていました。サーバ側は専任のプログラマーに立ってもらって、あとは自分でやりましたよ。FlashでActionScriptを書いて、CGも自分で描きました。
――デザイナー出身なのにすごいですね。
川瀬:1970年生まれで、ちょうどBASIC世代なんです。子供の頃はMSXでゲームを作っていたので、ActionScriptもそれほど苦ではありませんでした。独立するときも本当はエンタメ系の企業に入りたかったんですが、地元にそうした企業がなかったんですよね。仕方がないので自分で会社を作ったという流れです。
――それで2010年に中国を視察されて・・・
川瀬:おかげさまで増収増益が続いていましたが、けっきょくは受注業務なので、価格勝負・体力勝負になっていくんです。そこから脱却するために、自分たちのサービスやプロダクトが必用だと思っていました。もともとエディトリアルデザイナーだったので、紙がウェブになって、そこからゲームやエンタメに展開という流れは、それほど突飛なことではありませんでした。
――そこから「HERA」にはどのように繋がっていったのですか?
川瀬:「MARS ZERO」を出した後で、スマホでどの程度の表現ができるか、Unity上で要素検証を行いました。その時に作ったのが、スマホの傾きで宇宙船を操作し、隕石を避けながら時間内にリングを通過していくというものです。ちょうど寺門がプログラマーとして入ってきてくれて、一緒に作りました。その後、3Dアクションゲーム「INVITATION FROM MARS」としてリリースしました(現在は配信停止中)。
――なるほど。
川瀬:その上で、これができるなら、シューティングゲームもできるよねということになりました。そこで開発したのが「HERA 破滅の女神」で、2011年にリリースしました。寺門がプログラミングをして、自分が企画とグラフィックデザインを行いました。前述したように当時は震災後でしたが、仕事は昨年のものが継続していたので、本業のかたわらゲーム制作にかなり力を入れていました。
――足のないロボットが印象的です。
川瀬:もともとガンダム・マクロス世代なので、シルエットを見ただけでわかるデザインを心がけました。そこからスカート付き・足無しという基本フォルムが固まりました。3Dモデルも自分がライトウェーブ3Dで作成しています。
――マルチな才能が活かされていますね。3DCGも独学で学ばれたのですか?
川瀬:モデリングツールは六角大王から入って、メタセコイアを経由してライトウェーブ3Dに進みました。キャラクターはラフを自分が描いて、知り合いのイラストレイターにブラッシュアップしてもらいました。
――なるほど、それでメカは80年代、キャラは2000年代なんですね。
川瀬:そうかもしれません(笑)
――何か影響を受けられた作品はありますか?
川瀬:ベタですが「ブレードランナー」でしょうか。
――「HERA」というタイトルはどこからつけられましたか?
川瀬:「ガンダム」「マクロス」と4文字じゃないですか。アルファベットで4文字のものを考えて、主人公の機体は「ヘリオス」にしました。ギリシア神話の神々の名前がベースになっています。HERAはスペースコロニーの名前なんです。ゲームでも最後の方に、そこから派生したヒロインが登場します。世界観としても前述の「MARS ZERO」「INVITATION FROM MARS」とリンクしています。
――合計何ステージありますか?
川瀬:9~10ステージですね。実はiOS版とAndroid版で仕様が若干違うんです。最初にiPhoneのスペックにあわせて作ったら、当時はまだAndroidの端末スペックが低くて、仕様を減らさざるを得ませんでした。とはいえ、せっかく作ったのだから、iOS版はそのまま出そうと。