
CEDEC2025スカラーシップに参加させていただきました、京都デザイン&テクノロジー専門学校ゲームクリエイター専攻4年の進 倫久です。
専門学校では、ゲームの企画・進行管理・そして作品の完成までのフローを一貫して行うことで、ゲーム制作に必要な知識を幅広く習得することを目標に活動しています。
ゲーム業界におけるAIの活用動向~参加するにあたっての個人的目標
今年のCEDECではAI関連の講演が多く開催され、個人的にも関心の高い分野であったことから、「ゲーム業界におけるAI技術の立ち位置」や「各社のAIとの向き合い方」について知見を深めることを大きな目的として参加しました。
以下では、特に印象に残ったセッションや、Ask the Speakerで得られた知識をまとめます。
『モンスターハンターワイルズ』ゲーム開発の限界を超える! 先端技術を駆使した自動プレイシステム
従来の自動プレイ用AIは、ゲームシステム内に専用コードを組み込む形でテストを行っていましたが、本セッションではより本番に近い環境で動作させるため、ビルド後のゲームデータ上で動くAIを開発した事例が紹介されました。
AIには「目・耳・手」の3機能を実装し、目には物体検出モデルCNNを採用、耳には音データを画像化しYOLOで学習、といった形で人間の感覚器官を模倣しながら段階的に開発を進め、実運用レベルの自動プレイシステムを完成させた経緯が語られ、非常に刺激的な内容でした。
無限のプレイ体験! 『ハローキティ マーチマッチ』における深層強化学習を用いたオンデバイスレベル生成
スマホパズルゲームにおける深層学習活用事例として、オンデバイスでレベル生成を行う仕組みが紹介されました。
クラウド通信なしで瞬時にレベル生成が可能なため、快適なプレイ体験を提供できる点が特徴です。
AIによる強化学習で、難易度やアイテム組み合わせのバリエーションを自動生成し、約10万レベル分、6,250人日相当の制作工数削減を実現したとのことでした。AI活用の効果を強く実感できた事例です。
安心安全に生成AIを使おう! 社内で運用中の生成AIのガバナンスをご紹介
AIの利用が急速に普及する中で、無意識の利用による情報漏洩などのリスクも増加しています。これに対応するため、数年前から「生成AI委員会」を設置し、ガイドラインを策定・公開。まずは簡潔な方針書をまとめたものをA4一枚で作成し、誰でも目を通せるものを配布。
その後、社員からの問い合わせ内容を基に詳細ルールを構築することで、実際の利用状況や社員のニーズを反映したガバナンス体制を整えた事例が紹介されました。
AI活用に関する気づき(総括)
複数のセッションを通じ、以下のような共通点が見られました。
- 活用前段階の課題設定が重要
どのような問題を、どの方法で解決できるかを明確にした上でAIを導入している。 - 社内文化としてのAI普及
AIを活用する人とそうでない人の2極化を懸念し、非エンジニア層も使えるようにする意識を重視している。 - 活用の形は多様
- AIサービスを利用してコスト削減
- AI活用による新たなビジネス機会の創出
- 自社独自のAI開発・育成
企業だけでなく、部署やチームによっても異なる戦略でAIと向き合っている点が印象的でした。
CEDECの参加を通じて
私のように知りたがりの人間にとって非常に有意義な体験となりました。
AI以外についても、下記のように様々なテーマについて知見を得ることができました。
- 基盤となるデータサーバー
- 新興国のゲームショウ
- 育児ロードマップの見える化
- インディーゲームのパブリッシング契約
また、CEDEC終了後の交流会では、現役クリエイターの方々と直接意見交換を行う機会を得ました。現場のリアルな声を聞く中で、自身のゲーム業界に対する「熱」が、これまで以上に強くなったことを実感しています。