TGSスカラーレポート⑧セバスチャン・レンジャー

全体的な経験

今回の旅行は2回目の日本訪問で、TGS参加は初めてでした。私はザルツブルクでコンピュータアニメーション研究の博士課程に在籍しており、大学ではインディゲーム的な環境で2本のゲーム開発にたずさわっています。そのため自分にとってゲーム開発の環境は身近なものであり、これまでにもオーストリアやヨーロッパのゲームイベントに参加したことがありました。TGSはゲーム、開発者、そして特にプレイヤーのための偉大な祝典のように感じられました。そしてこの仮想世界で多くの時間を費やすファンが会場にはたくさんいました。TGSはとてもすばらしく、ポジティブな体験でした。ここでは個人的なハイライトと、これからTGSに参加される方へのTIPSをまとめておきます。

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ハイライト

スタジオツアー
一番印象に残った点の一つがスタジオツアーでした。自分にとって、それは開発の舞台裏を知ることができ、訪問先の企業でさまざまな情報が得られました。その中でももっとも重要だったのが、ゲーム開発者やアーティストに個人的に質問やはたらきかけができた点です。外国人にとって、日本の開発者がどのように企業で働いているか想像することは、非常に困難です。そのため彼らの就労哲学やスタジオの環境を見学することは非常に楽しいことでした。

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トークイベント
ビジネスデイでは多くのトークイベントがあり、日英の同時通訳のおかげで、非常に情報量の多いものでした。TGS2016ではVR関連のコンテンツをフィーチャーしており、トークイベントでもVRは重要なトピックでした。日本では多くの人々がVRについて関心があり、VRへの扉を開けるためのディスカッションが行われていた点が印象的でした。彼らはVRを日本市場だけでなく、アジアそして世界全体のものとして捉えており、その点が非常に興味深く感じられました。

インディコーナー
会場の中でも主要なものの一つにインディゲーム開発者のための特設コーナーがありました。彼らはとても社交的で、ゲーム開発について学ぶ学生に対してさまざまな知見を授けてくれたので、会場で彼らと話すことはとても好ましい経験でした。彼らの多くは英語を喋り、国境をまたいだ開発についてとても関心がありました。とても小さなスペースで、さまざまなゲームがあり、そこでたっぷりと時間を費やして、気後れせずに質問できました。彼らはそれを歓迎してくれたのです。

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センスオブワンダーナイト
これは言葉で説明するのが非常に難しく、とてもスペシャルなイベントで、たくさんの非常識なアイディアと手法をもちいた、刺激と驚きをもたらすプレゼンテーションが続きました。過去のセンスオブワンダーナイトはもっと素晴らしかったと小耳に挟みましたが、ステージはとてもすばらしく、存分に楽しめました。すばらしい発表をありがとうございました。

パーティ
すばらしい料理と飲み物も手伝って、パーティは新しい人と出会い、自分のネットワークを拾えるために最適な場所でした。特にインディストリームフェスは他の開発者とのコネクションを簡単に作ることができ、仕事の機会さえ得られる場所でした。私は自分にとって居心地の良い空間からはなれて、それこそ他のIGDAスカラーたちとたむろすること以上に、新しい人々と出会い、日本語で会話することが、非常に重要だと考えました。そして、その夜いっぱいを使って、このことを実践しました。ゲーム開発者なら誰でも、コンスタントに素晴らしいゲームを作り、市場で評価されることがどれだけ難しいか知っています。そのため私はソニーやセガのゲーム開発に携わっている人々に会い、心からの畏敬の念をいだきました。

他の人々へのアドバイス

名刺とポートフォリオを持参する

ネットワーキングの機会があるため、これは自明の理ではありますが、それでも(外国人にとっては)日本向けに特別な名刺を用意することをオススメします。複数言語で印刷されたもので、欧州の名刺などとは、少し体裁がことなることに注意してください。ポートフォリオも準備しておいてください。おそらく皆さんは日本の文化に興味があり、国内で、または海外で働くことを希望されていると思いますので。

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言語の壁を乗り越える
私の日本語はつたないものでしたが、それでもさまざまな人々に出会うことができ、新しい友人を作ったり、新しい体験を得ることができました。外国人にとって日本語で話すことで、言語の壁を乗り越えようとすることはとても重要です。自己紹介を日本語で行うことと、うまく言葉が出てこないときに、英語で話してもいいですかと尋ねられるようにしておくといいでしょう。スタジオツアーでは話についていくのに苦労しましたが、それでも終了後に他のスカラーに要点を聞いたり、内容を通訳してくれたりしたので、多くの情報が得られました。

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WI-FIのレンタルやパスモ/スイカの購入を検討する
日本の地下鉄や鉄道は初めて訪れる人にとってとても複雑でわかりにくいものです。しかしパスモやスイカがあれば、支払いが非常に楽になるばかりでなく、さまざまな種類がある自動販売機で決済に使うこともできます。同じように、短い旅行であってもSIMやWi-Fiの購入・レンタルを検討してください。滞在がとても楽になるばかりでなく、道に迷ったときに他の人に現在位置を教えてもらう手がかりにもなります。

ビジネスデイを効果的に使う
ビジネスデイでは自分の好きなゲームを試したり、会場を回ることにためらいを覚えないでください。というのもTGSの一般公開日はとても混雑し、待ち時間が劇的に長くなります。一般公開日では来場者を観察し、どのように彼らが周囲とかかわって、ゲームをプレイするか、その姿を知ることが重要です。というのも、あるゲームが市場で成功するか否かの情報を、そうした一般客の行動から推測することができるからです。

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まとめ

TGSを訪問すること、そして特にスタジオツアーに参加することは、私にとってすばらしい経験でした。もっと日本語を上達させたいと思うことしきりでしたが、開発風景を直接見ることができたり、さまざまな人々とお会いできたことは、私の将来のキャリアにとって、非常に有益な刺激を与えてくれました。IGDAスカラーシップの裏で私たちの滞在に対しさまざまな協力をいただいた皆様、特に私たちのメンターを務めてくれた小野憲史さんに深く感謝します。とてもすばらしい働きで、私たちを助け、導いてくれました。一緒にすばらしい時間を過ごした他のスカラーにも感謝します。とても楽しい体験で、ぜひ後身のスカラーにも日本に来て、自分たち自身でこのプログラムを体験して欲しいと願っています。

みなさん、ありがとうございました。

(翻訳:小野憲史)