GDC2016報告会レポート第2弾「出展・生産性・インディ」

【生産性と繁栄を】

タスクが膨大に膨れ上がり、人手不足の結果、満足な開発が行えなくなる・・・ゲーム開発現場では良く聞かれる話です。
そのための対策が「生産性を上げること」。
中でも人手を増やすのは、もっとも簡単で有効なやり方です。
ただし、会社が雇用できる社員数には限界があり、補充も都合よくは行えません。
そこで重要になるのが、一人当たりの生産性の向上です。
「生産性が上がれば、開発がスムーズに行え、業務の選択肢が増える」
ツェナネットワークスの佐野浩章氏は、こうした見知から問題解決のヒントとなる講演レポートを行いました。

生産性の改善には大きく「1.生産性の高い人材を教育する」「2.生産性の高いチームを作る」「3.生産性のアシスト」という3点があります。
このうちGDCでは「1」と「2」に関する議論が数多く見られたと佐野氏は語ります。

まず「生産性の高いチームを作る」ために必要な要素として、紹介されたのが、「The Game Outcomes Project」という講演です。
本講演では生産性の成果指標を「文化」「チームワーク」「生産要素」に対して、「投資収益率」「批評家の称賛」「プロジェクトの遅延」「満足度」「集計成果」との相関関係を統計解析することで設定できるとします。
[講演スライド] [講演ビデオ]

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佐野浩章氏

なぜ、生産性における統計解析が重要になってくるのでしょうか。
こうした指標の設定が、「Plan(計画)」「Do(実行)」「Check(評価)」
「Action(改善)」で知られる「PDCA」サイクル上での成果指数に繋がっていくからです。
特に海外のプロジェクトでは、この「PDCA」サイクルの繰り返しで生産性を向上させるという意識が、日本よりも高いと指摘されました。

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また、プロジェクトを進めていくと、どうしても「よりクオリティを高めたい」という現場の欲求が生まれ、残業が膨らみがちになります。
そこで例にあげられたのが、毎週60時間残業するグループと、毎週40時間残業するグループの生産性の違いです。
前者はプロジェクトを繰り返すたびに生産性が安定するのに対して、後者は最初こそ生産性が高いものの、4周目から低下してしまいます。
現場としてはクオリティアップを求めて、ついオーバーワークをしがちですが、トータルの生産性を考えれば、こうした行為は推奨できないと言います。

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プロジェクトの適正なメンバー数についても報告がありました。
それによると「アジャイル」や、「スクラム」といった開発体制は150人以下のプロジェクトに適しており、それ以上チームが膨らむと、「ウォーターフォール」型が効率的だといいます。
さらに5人程度のスモールチームでは、特別な開発体制をとらないほうが逆に効率的だとも語られました。
「プロジェクトチームの規模ごとに、どういった管理体制を引くのか、各社で参考にしてほしいですね」(佐野氏)

最後に「生産性のアシスト」として紹介されたのが「ツールの使用」です。
ある作業がツールの使用でフォローできれば、その分の余力が生まれ、他の作業を行うことができます。
そのため佐野氏はコンテンツの自動生成など、ツールで置き換えられる仕事は、積極的に行うべきだとします。
樽のモデルが自動生成できる「SPEED BARREL」といったユニークなツールから、「SPORE」のパーツを選ぶだけで多種多様なクリーチャーが創造できるエンジン、さらには年代を特定するだけで街なみのモデルが自動生成できる「CityEngine」など、多種多様なツールが存在します。

プロジェクトは長期になりがちです。
開発メンバーはつい頑張りがちになり、体力を消耗していきます。
しかし健全なチームを維持することが、生産性の高いチーム作りに繋がります。
「生産性が上がることで、自分ひいては組織も繁栄できます。プロジェクトが始まる前に一度、開発体制を見なおしてみてください」(佐野氏)