人工知能の社会化に必要なこと/SIG-AI 人工知能のための哲学塾 未来社会編 第零夜「概論」レポート

待望の第3シーズン、スタート

自我を持つ人工知能の開発について議論するセミナー「人工知能のための哲学塾」シリーズ。毎回SIG-AI世話人の三宅陽一郎氏が人工知能と哲学の関係性について講演し、それを受けて参加者全員がグループディスカッションを行う、ユニークな勉強会です。2015年~2016年に開催された「西洋哲学編」と、2017年に開催された「東洋哲学編」を経て、2018年より第三シーズン「未来社会編」がスタート。2018年8月27日に開催された「第零夜」では、未来社会編全体のテーマと議論のための枠組みが三宅氏より語られました。

前回までと会場を一新し、新たに渋谷Fabcafeで開催された本セミナー。通常にセミナールームと異なり、一般のお客さんが自由に見守る中で、勉強会の幕が開がります。いつもと違う雰囲気に運営スタッフも心なしか緊張しているよう。それでも三宅氏が「『西洋哲学編』と『東洋哲学編』では、人間の内面を頼りに人工知能の内面に深く迫ることが目的でした。しかし『未来社会編』では、人間の社会を頼りに人工知能の社会に深く迫っていきます」と切り出すと、一気に参加者の注目度が講演に傾いていきました。

もともと人工知能の研究は人間の知能を機械上で再現することを究極の目的に、1950年代のアメリカでスタートした経緯があり、デカルトに代表される西洋哲学を思想的背景に持ちます。しかし、それだけでは「自我を持つ」人工知能をなかなか作り出せないのも事実。そこには「物事を要素に分解し、個々を分析していくことで、全体を理解しようとする」西洋哲学の限界があるのではないか……。そこで東洋哲学の「物事を要素に分解せず、ありのままに受け止める」姿勢を補完する必要があるのではないか……。過去2シーズンではざっくりと、このような議論が行われてきました。

もっとも、自我が必要とされるためには、「他者」の存在が前提となります。「わたしひとり」しか存在しない世界では、自己と他者を区別する必要がなく、自我が求められることもないからです。そのため人工知能についても、スイッチを入れるとパチンと完成された自我が誕生するのではなく、複数の人工知能が互いにインタラクションをとりながら(動物の子供が互いにじゃれ合いながら社会性を身につけていくように)、徐々に自我を獲得していくと考えられます。そのためには人工知能にとって他者とは何かについて、改めて考えていく必要があります。

会場となった渋谷fabcafe