IDW’15 チュートリアル(12/8)

ディスプレイ関連でアジア最大の国際学会であるIDW(SIGGRAPH ASIAとも連携)が12月9日から11日まで滋賀県の大津で開催されます。同学会では4年前からAR&VRに力を入れており、今年も多数の発表やデモが行われます。発表は英語ですが、事前に基礎的な技術内容を日本語で学べるIDW15チュートリアルも開催されます(以下リリース転載)

 

IDW’15 チュートリアル

2015 年 12 月 8 日(火) 12:50~17:50
大津プリンスホテル(滋賀) 2F 淡海10

本チュートリアルは、各分野のエキスパートのご講演者に、IDW で予定されている研究発表の背景や、各分野の最新動向、トピックスについて解説していただき、翌日からのIDW 聴講の理解の助けとなることを狙うものです。特に学生や若手社員等にとってIDW 本番での英語講演に先立って日本語での基礎解説を聴講するにことにより、IDW 参加の意義・効果を高める効果を期待します。
(本企画は、IDW 開催に先だってIDW と同会場で実施しますが、IDW 自体の企画ではなくSID 日本支部主催で開催するものです。)
今年も下記のとおり、IDW 会議に先立って、チュートリアルを開催することになりました。
今年は、特に、特別講演としてノーベル賞受賞者天野先生をお迎えすることもあり、照明関係技術についても紹介するとともに、AR&VR で注目されているAR グラスなどのウエアラブルディスプレイ技術や車載用ヘッドアップディスプレイに加えて、フレキシブルディスプレイに代表されるプリンタブルエレクトロニクス技術、ならびに、QD などの新しいデバイス技術も含めて事前に勉強することができるので、本会議の前の基礎知識習得や動向調査に、ぜひ、ご活用ください。

プログラム

12:50 開会挨拶 SID日本支部長
13:00 液晶マテリアルにおける最近の話題 荒岡 史人(理化学研究所)
13:30 BLU光学 (BLU Optics) カランタル カリル(Global Optical Solutions)
14:00 アクティヴマトリクス技術の進展 雲見 日出也(東京工業大学)
14:30 休憩
14:40 有機ELディ スプレイ・照明の研究開発動向 内田 孝幸(東京工芸大学)
15:10 Applied Vision and Human Factors 久武 雄三(株式会社ジャパンディスプレイ)
15:40 3D表示技術の概要 陶山 史朗(徳島大学)
16:10 休憩
16:20 拡張現実感ディスプレイ技術(AR&ヘッドアップディスプレイ) 奥村 治彦(株式会社東芝)
16:50  フレキシブルディスプレイの基礎と技術課題 藤掛 英夫(東北大学)
17:20  蛍光体技術によるLCDの広色域化 楠木 常夫(デクリセリアルズ株式会社)

参加費(資料代含む)
会員 3000円、一般(非会員)5000円、学生 1000円
参加申し込みは必要ありません。
参加費は会場前受付にて当日現金支払いをお願いします。(領収書をお渡し致します)
問い合わせ SID 日本支部副支部長 奥村(haruhiko.okumuraあっとtoshiba.co.jp)

概要

(1) 液晶マテリアルにおける最近の話題
近年、ディスプレイを超えた応用を見据えた液晶物質の研究が多くなされている。化学分野では、液晶の本質である分子の自己組織化により、新規な半導体や強誘電体などが生み出されており、中には非常に高い性能を有するものも報告されている。物理分野では、ツイスト・ベントネマチック相という新規相が注目され、構造や物性が活発に研究されている。本チュートリアルでは、こうした液晶の物質科学における最近の話題を紹介する。

(2) BLU光学 (BLU Optics)
透過型液晶表示素子の初期の製品化では光源、シルク印刷された散乱ドット導光板と拡散フィルムを組み合わせた裏面平面光源(バックライト;BLU)が考えられた。1995年は発表者によって微小光学素子が光学理論に基づいた光整形に使用され、世界初光学に基づいたBLUが登場した。微小光学素子の機能は全反射によるものであり、アレイによる光の反射方向や屈折方向が制御される。これはBLU光学の始まりであり、その後発展を続けている。このプレゼンではBLU光学とこれに元づいたBLUについて報告する。

(3) アクティヴマトリクス技術の進展
PDPが使命を終えた今日、殆どの高画質或いは動画対応のインフォメーションディスプレイは、TFTを含む回路によるアクティヴマトリクス(AM)方式のバックプレーンで駆動されることとなった。本講演ではIDW AMD-WSが推進してきたAM技術の進展と、とくに近年注目を集めてIDW STIにも設定され商品化も進む、酸化物半導体TFTによるAM技術を概説するとともに、今年のIDW’15 AMD-WSの見所を紹介する。

(4) 有機ELディ スプレイ・照明の研究開発動向
有機EL素子(OLED) はその名の通り薄膜、自/面発光、DC駆動等の素性の良さから次世代のディスプレイ・照明として発展している。近年では材料、素子開発ならびに柔軟性の特 長や駆動素子の進展に相まってさらなる性能の向上の期待が 高まっている。本講演では最近の発表のレビューを元にこれらの開発の動向について紹 介する。

(5) Applied Vision and Human Factors
ディスプレイの画質は画像の物理的要因と画像を観視する人間の視覚特性並びに心理的要因との相互作用により決まる。この関係を明らかにして、ディスプレイのあるべき姿、その実現方法を調査、研究開発するのが、Applied Vision and Human Factors(VHF:視覚と人間工学)である。本稿ではVHFについて概説し、VHFのトレンドを紹介する。

(6) 3D表示技術の概要
立体視の基礎から最近の3D表示技術までを概説します。3D表示の歴史は古く、1830年代から多くの技術が提案されていますが、実は現在でも分かっていないことが多く、まだまだ発展途上であると言っても過言ではありません。その理由は、2D表示と違って、多くの手がかりをもとに、脳内で3D世界を新たに構築させる必要があるためであり、かつ次元が実は3個も増えるためで、その辺にも触れられればと考えています。

(7) 拡張現実感ディスプレイ技術(AR&ヘッドアップディスプレイ)
Google Glassのように、現実空間に仮想情報を重畳して表示する拡張現実感ディスプレイ(ARグラス)が注目される中、今年、AR技術の世界トップコンファレンスであるISMARが福岡で開催される。また、自動車用のAR技術として、視線を動かさずに、メーターや警告を表示したり、ナビ用に路上に仮想矢印を表示することが可能なヘッドアップディスプレイ(HUD)が各社から製品化されて注目される中、今年、CG技術の中心であるSIGGRAPH ASIA(神戸にて開催)でHUDのワークショップが開催される。このような拡張現実感技術(AR&HUD)の基礎と動向について解説する。

(8) フレキシブルディスプレイの基礎と技術課題
今後の情報化社会を先導する次世代基盤技術として、高画質フレキシブルディスプレイの実現が待望されている。フレキシブルディスプレイは薄くて柔らかい機械的特質に基づき、携帯・収納・意匠の自由度を飛躍的に拡大するため、あらゆる生活シーンで電子情報機器の機能性や付加価値を高めることなる。本講演では、有機ELや液晶ディスプレイなどのフレキシブル化技術と課題を解説するとともに、今後の社会的インパクトを展望する。

(9) 蛍光体技術によるLCDの広色域化
LCDの高画質化には目を見張るものがある。2016年に試験放送が始まる8Kの放送規格BT.2020はその広い色域規格で注目を浴びており、LCDの広色域化検討は今後更に加速されると考えられる。LCDの色域は、そのバックライトとカラーフィルターの光学特性でほぼ決まる。本講演ではこのバックライトに用いられる蛍光体の観点からこの広色域化について述べたい。また、最近話題の量子ドットに関しても触れたいと思う。