SIG-GLOC#15「アプリのライセンスイン事情」セミナーレポート

【アプリの海外共同開発/アンビション】

続いて登壇したのはアプリの海外共同開発を手がけるアンビションの相見信之介氏です。同社は2004年に創業し、東京・沖縄・ベトナムに拠点を構える、社員数258名の中堅企業。2012年に北米向けローカライズで入社後、「MOE Can Change :Myroid 4 Life(邦題「萌えcanチェンジ!)」などのタイトルを担当。直近では韓国JSC Gamesとパズルゲーム「Spooky Door」を共同開発し、海外配信するなどの成果をあげています。

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相見信之介氏

海外タイトルをライセンスインする場合、通常は言語翻訳やグラフィックの差し替えなど、最小限の労力で済ませるのが一般的です。しかし同社の場合は開発会社に対してソースコードの提供を求めるなど、ライセンサーとライセンシーががっぷり4つに組んで進める共同開発スタイル。「マッチング」「協議」「協業」というのが大まかな流れとなりますが、そこには同社ならではの工夫が盛り込まれていました。

「1つのゲームをさまざまな市場に投入したい」「リスクを抑えて市場を拡大し、営業利益向上につなげたい」・・・こうした理由で海外協業を開始した同社。もっとも、海外企業とのネットワークが皆無だったため、まずはゲームコネクションアメリカなどのB2Bイベントへの出展からネットワーク作りを始めたと語ります。今でも台北ゲームショウやG-STARなど、アジア圏を中心にB2Bイベントに積極的に参加しています。

グラフィック制作に力のあるアンビション。必然的に開発ではグラフィックをアンビション、プログラムを海外企業が担当し、作業量に応じて開発資金を持ち寄るのが典型的な座組なのだとか。ここで相見氏は「ソースコードの提出が可能か」が大きな条件だと説明しました。これを嫌がる開発会社は非常に多いものの、リリース後にロジックバグが判明すると死活問題になるため、同社にとっては譲れない一線だとします。

またミニマムギャランティ(MG)の定義が地域や企業によって異なる点にも注意が必要だとしました。相見氏は通常「全体売上のうちプラットフォーム手数料を除いた金額がMGに達したらレベニューシェアが発生する」「ライセンサーへのレベニューシェア額がMGに達したらレベニューシェアが発生する」という2つの方式があり、時には4倍近く金額が異なることもあるため、必ず確認して契約書に盛り込む必要があるといいます。

このほか「協業企業チェックリスト」も紹介されました。「コミュニケーション(日本語で対話できるか/論理的な話し合いが可能か/回答が1営業日以内で来るか)」「条件(ゲームが日本市場に一致しているか/単独で実施するよりメリットが高いか)」「技術(ソースコード提出が可能か/不具合に真摯に向き合えるか/開発組織が明確で責任者を擁しているか/品質に関する認識が一致しているか)」などの項目に分かれています。

協業先の信用調査については、「JETROのメンバーズ会員向けサービス」や、民間調査会社のコファスサービズジャパンのサービスを活用しているとのこと。開発はChatWorkやGit、Redmain、Skypeなどのツールを駆使して行われ、月次のオフラインミーティングと週毎のオンラインミーティングを通して作業が進んでいきます。相見氏は「まだ共同開発をはじめて2年半で、このスタイルが正しいかわからないが、学びながら進めたい」と語りました。