【被って試した。VRシステムビッグ3体感比較+α】
「Oculus RIFT(以下Oculus)」がGDCで初めて出展されたのが2013年。
あれから3年が経ち、「HTC Vive(以下Vive)」や、「PlayStation VR(以下PSVR)」の発表も相次ぐなど、2016年はVR元年と呼ばれています。まさに今年のGDCはVRの集大成といった感じで、VR関連の出展やセッションが非常に多くみられました。
このVRを黎明期から取材し続けているのが、ゲームジャーナリストの佐藤カフジ氏。報告会ではこれらVR関連の所感が語られました。
いわゆる三大VRシステムとされるOculus、Vive、PSVR。ただし、それぞれのシステムには一長一短があり、表示パネルの鮮明さや装着のしやすさはPSVR。トラッキング精度や範囲はViveが秀でていると言われています。中でもGDC会場では、ゲームから周辺機器まで幅広い出展者がViveによる展示を行っていたといいます。
なぜViveの出展が多いのでしょうか。佐藤氏は「Valve/HTCが大量のViveの配布を行い、相当数がデベロッパーに行き渡った点」と、「一対のLighthouseで複数のHMDをトラッキングできるため、狭い場所でも試遊機をたくさん展示ができる点」が原因ではないかと言います。「また、OpenVR SDKがOculus Runtimeにも対応し、OculusとViveで両方に製品展開できるメリットが大きい」とも考察しました。
ただしユーザーの関心や、話題性となれば話は別です。今回一番話題にあがっていたのはPSVRだったといいます。ローンチイヤーには50タイトルが用意される予定で、同時に発表された価格面についても、ドル・ユーロ圏では好意的に受け入れられていると分析しました。
この様に大きな盛り上がりを見せているVRシステム。一方でVRシステム特有の問題「VR酔い」が課題になっているのは周知の通りです。Ubisoftの「Eagle Flight」では、このVR酔いを防ぐテクニックが盛り込まれました。
鷲になってパリ上空を飛び回るレースゲームで、画面を見た瞬間に「これは絶対に酔う」と感じた佐藤氏。しかし実際に遊んでみたところ、酔いを感じなかったといいます。
そもそもVR酔いは、実際には体が動いていないのに動いているように感じる、ベクション(視覚誘導性自己移動感覚)が原因だと言われています。では、なぜ「Eagle Fight」ではVR酔いの発生が抑えられているのでしょうか。
ポイントは画面の視野を状況に応じて狭める「ベクションマスク」(佐藤氏命名)の存在です。これはベクションを引き起こしやすい視界の周辺部分を、移動速度や移動方向に応じて覆い隠すことで、VR酔いを防ぐというもの特に高速移動時は進行方向に集中しており、視野が狭まっているため違和感がなく、マスクの存在にほぼ気づかなかったといいます。「ただし迫力が落ちるのは事実なので、VR酔いに強い人のために、マスク無しモードと選べるようになっていると良いですね」(佐藤氏)
また、GDCではVRシステム対応の試作デバイスも多数出展されていました。佐藤氏の琴線に触れたデバイスは次の3点です。
1つめはグローブ型ハンドプレゼンスデバイス「Manus」です。各指の動きを検出するこのデバイス。精度もよく、薄手で装着感は良好。ゲームコントローラーと併用もできそうな予感といいます。
2つ目は電波式全身トラッキングシステム「STEM System」です。手・足・頭をトラッキングでき、感度・精度共に良好で、アミューズメント施設への導入に向いていそうだと述べられました。
3つ目は腕輪型筋電デバイス「Unlimited Hand」です。腕に巻いたセンサーを通して、神経に電気を流すことでハプティクス(皮膚感覚フィードバック)を与えることができるデバイスです。筋肉が動かされる感じがあり、腕輪がピリっとなった際に指がビクンと動きます。コントローラーとの併用もでき、有望なデバイスだと述べられました。「精度があがれば面白い応用がいろいろできそうな予感がします」(佐藤氏)