新年のご挨拶

ゲーム開発者のみなさま、新年明けましておめでとうございます。

IGDA日本代表理事の高橋勝輝(たかはし かつてる)です。
本業は、プログラミングもする編集者として仕事をさせていただいております。
IGDA日本では初期メンバーのひとりで、イベントでの受付やサーバーの管理などをしています。

なお、前代表理事である小野は、IGDA日本の事務局長として活動をしております。
ひきつづき、よろしくお願い致します。

さて、2017年はIGDA日本の活動が始まって15年目の節目になります。
今年は、新しい取り組みをはじめられたら、と思っています。
それは、さまざまな形式の「ワークショップ」の開催です。
ゲーム開発者個人のコミニティであるIGDA日本を、ワークショップの実施を通して、教わるだけの場所ではなく、参加者すべてが教え教わる共有場にしていきたい。

その実現ために、ゲーム開発者である、あなたの積極的な参加を今まで以上に期待しています。

本年も、IGDA日本を、どうぞよろしくお願い申し上げます。


以下、新しい取り組みをする理由を述べています。お時間のある方は、ご一読いただければ幸いです。

IGDA日本が始まった2002年当時は、勉強会という言葉もめずらしく、ゲーム開発者同士で交流するなんて狂気の沙汰といわれていた時代でした。

しかし現在では、ゲーム業界内には、さまざまなコミニティができ、勉強会がおこなわれており、IGDA日本も、そのひとつにすぎない存在になりました。
さらにゲーム業界だけでなく、さまざまな分野や業界で勉強会が毎日にようにおこなわれ、
業界の垣根をこえた交流会もひらかれています。

勉強会というと、講師が教壇に立ち、参加者は話を聞くというスタイル、いわゆる、学校の教室で行われている授業のやり方です。
ここ100年余りにわたって、日本でものごとを教える方法として確立しています。
このスタイルは、1人の人が多くの人々に確立された知識を教える方法として大変効率的なものです。
一方、このスタイルの欠点は、「先生がいないと、授業が成立しない」ことにあります。

ところが近年、先生がいなくても授業が成立する方法が、実施されはじめています。
「ワークショップ」と呼ばれています。
CEDECでおこなわれているラウンドテーブルもそのひとつの形態です。
ほかにもワールドカフェ、ダイアローグ、ビブリオバトルなど、さまざまなものがあります。
ここに教える先生はいません。進行役であるファシリテーターが必要な場合もありますが
やり方そのものが、教える仕組みをもっているのです。
誰が先生なのか生徒なのかを、あえていうなら、参加者すべてが先生であり、生徒なのです。

なぜ「ワークショップ」を実施する必要があるのか。従来の授業のやり方ではダメなのか。
ダメではないのですが、従来の授業を成立させるための条件が、ゲームをテーマにした場合では成立しにくい状況にあるのです。
現状、ゲーム開発者がききたい話をできる講師がいない、状況なのです。

たとえばVRゲームを例にしてみると、現状VRゲームで成功したといえるものはナイと高橋は思っています。
つまり、VRゲームで成功した人を先生に迎えて、話を聞くことはできないのです。
じゃあ、失敗した人にしくじり話を聞くことができるか。これもできないと、高橋は考えます。
成功した人が存在しないので、失敗した人も存在しません。いるのは、VRゲームを作ってみた人だけです。
繰り返しますが、現状にあるのは、VRゲームだけです。成功したVRゲームも、失敗したVRゲームも、ありません。

確立された知識、成功する道筋、失敗した手順、そのどれもがVRゲームには存在していません。
今VRゲームにあるのは「やってみた」だけなのです、と高橋は考えます。

そんな「やってみた」を共有するのに「ワークショップ」は最適です。

オレの「やってみた」は、誰かの課題を解決するのに役に立つかもしれない。
オレの課題は、既に誰かが「やってみた」していて、オレの課題を解決するヒントがあるかもしれない。
オレの課題は、誰も「やってみた」していなくて、世界にとって新しい課題かもと判明するかもしれない。

が、ワークショップでは分かるのです。

そしてワークショップ最大の利点は、参加者すべてが先生になることです。

教育を研究している人からの情報によると、人は、教える時に学ぶことが最大になる

そうです。一方で聞いているだけの情報は、人は一晩たつと60%以上忘れてしまうそうです。
いちばん学んでいるのは生徒ではなく、先生だったのです。

2011年には、オライリー・ジャパンから「ゲームストーミング――会議、チーム、プロジェクトを成功へと導く87のゲーム」が出版されています。
ゲーム開発者が、こんな興味深いゲームをしない手はありません。
IGDA日本では、この本などを参考に「ワークショップ」を開催していきたいと思います。

コミニティとは、教わるだけの場ではなく、参加者すべてが教え教わる場所だと、高橋は思っています。

IGDA日本を、すべてのゲーム開発者個人が教え教わる共有場にしていきたい。

以上もってを、2017年の所信表明とさせていただきます。
お時間をかけて長文を読んでいただき、ありがとうございました。
あなたのお役に立つことがありましたら幸いです。