TGSスカラーシップ2019体験レポート⑦ 平井龍之介

今回IGDAスカラーシップTGSコースに参加させていただきました、平井です。

一日目ではツアーに行き、様々な規模、ジャンルのゲーム企業を見学させていただきました。

どの企業も昨今の市場に出回るゲームの多くなっていくこと、ゲームの1本あたりの開発期間が長くなっていくことへ上手く対応することに注力しており、VRコンテンツにも力を入れる、2D GvGのノウハウを活かす、といった様々な手法で個性を発揮していたところに、会社のみならず個人としてゲーム業界で生き残る方法が示唆されていたように思います。

特に興味深かったのは3社目のプラチナエッグ様で、ブロックチェーンを用いたゲームの作成をしている企業だったのですが、ブロックチェーンによってゲーム内のバーチャルな経済と現実世界の経済がリンクすることによって、ゲームを実際にプレイする人間とゲームに投資(課金)して資金運営をする人間が別になり、将来的に一種の投資のような機能をゲームが果たすようになる可能性がある、という概念がとても興味深いと思いました。「実際にゲームをプレイする」従来のゲームプレイヤーのほかに、もっと大きな規模で「ゲームを中心に回る経済に参加する」第二のゲームプレイヤーが発生しうるかもしれないという仮説は「大きな規模のゲームを作る」という試みに対する新たなアプローチであると感じました。

二日目以降はTGSを見学し、実際に展示もするという貴重な経験をしました。我々の展示ブースはインディーブースの中にあり、周囲に様々なインディーゲームがあったので、沢山の尖ったゲームを目にし、体験することが出来ました。インディーゲームの強みとして、独特なゲームシステムの開発に挑戦できるというものがあると思うのですが、今回展示されていたインディーゲームはどれもエッジの効いたモノばかりで、その発想力に驚かされるばかりでした。私が特に気に入ったゲームは「Legal Dungeon」というゲームで、自身は検察になって発生した事件の詳細や犯人の情報をまとめて送検書類を作成する、というゲームで、ゲーム的な要素とゲーム以外の分野の情報の接続が鮮やかであったのと同時に、ゲーム内独自の法律を説得力のあるクオリティで作り、なおかつローカライズによって人物名や法律名などをその国にありそうな名前にすることでその物語がさも現実の自分の国で発生しているかのように錯覚させる力量には感服でした。

基調講演では5Gの到来が通信機器の未来、ゲームの未来をどう変えるかという内容の講演をしていただきました。5Gによって通信速度の向上がもたらされたとき、次にデバイスのボトルネックになるのはむしろハードウェアの側の性能であるという考えには驚かされました。言われてみれば当然だという感じですが、5Gが普及したとしてその性能についていけるデバイスが無ければ十分に強みを活かすことはできません、今後はローカルな側の遅延をいかに解決するかが重要になってくると考えられます。また、5Gの何が嬉しいのか、という質問に対して「トラフィックを増やせることを利用して多くの情報をサーバーサイドに置ける。そうすればより楽でより堅固なチート対策ができる」という考えも興味深かったです。5Gと言われると「高速通信による大規模マルチプレイ」などの派手なアイデアに惹かれがちですが、こういった現実的で地に足の着いた用法もあるのだと納得しました。

私は対戦ゲームをブースで展示したのですが、事前に用意してあったAI機能によって一人の方にもプレイしていただけるようになったことで、様々な人にゲームをプレゼンできるようになり、今までの展示会よりも様々な人にアドバイスを頂けたのが良かったです。TGSでは平日と休日で見学に来る人の性質が全く違うので多くの視点からの意見を得られ、より一層面白いゲームを作るため手がかりを得ることができました。

また昼食の際、展示の際などにはゲーム業界のクリエイターと沢山お話する機会を戴き、ゲーム業界のことや、自分に足りないスキル、次に目指すべき場所などを知ることができました。

これらの体験を活かしてさらなるスキルアップを目指していこうと思います。