地方創生SIG準備会セミナー2開催レポート

IGDA日本主催の地方創生SIG準備会の第2回が、2月12日に開催されました。地域活性化の一環として、eスポーツやゲーム開発などゲームに関わるイベントを開催した事例を持ち寄るという会で、今回は4人の方が講演されました。

タスク管理ツールJootoによるゲーム開発実例について

株式会社PR TIMESの原悠介氏は、「タスク管理ツールJootoによるゲーム開発実例について」(講演資料)と題して講演しました。Jootoは原氏らが開発したカンバン方式のタスク・プロジェクト管理ツールで個人やチーム単位でタスクを管理共有し、プロジェクトを進めていくというものです。

原氏はJootoの活用法と絡めて、”コミュニケーションの不確実性”について語りました。情報はそれを知っている人と知らない人の分断が発生したり、自分が思う正解が全体にとっての正解でなかったりと、正しく伝達することが難しいと言います。

ゲーム開発をしていくときでも時間が経過し、多くの職種のメンバーが関わっていくほどに「情報の非対称性」の発生レベルは上がっていきます。原氏は「人の認知能力には限界がある」とした上でコミュニケーションの不確実性を減らすためのポイントを3点挙げました。

株式会社PR TIMESの原悠介氏は、「タスク管理ツールJootoによるゲーム開発実例について」(講演資料)と題して講演しました。Jootoは原氏らが開発したカンバン方式のタスク・プロジェクト管理ツールで個人やチーム単位でタスクを管理共有し、プロジェクトを進めていくというものです。

原氏はJootoの活用法と絡めて、”コミュニケーションの不確実性”について語りました。情報はそれを知っている人と知らない人の分断が発生したり、自分が思う正解が全体にとっての正解でなかったりと、正しく伝達することが難しいと言います。

ゲーム開発をしていくときでも時間が経過し、多くの職種のメンバーが関わっていくほどに「情報の非対称性」の発生レベルは上がっていきます。原氏は「人の認知能力には限界がある」とした上でコミュニケーションの不確実性を減らすためのポイントを3点挙げました。

VR会議システム桜花広場によるリモートワークマネージメントとワークフロー

桜花一門代表取締役の高橋建滋氏は、「VR会議システム桜花広場によるリモートワークマネージメントとワークフロー」と題して講演しました。

高橋氏の会社では2018年春、今後の方針について社内でもめて、全スタッフが辞める事態が発生。その後、VR技術を持つ大学生が助力を申し出てくれたものの、大学の講義などもあり出勤できないため、リモートワークの形を取ることになりました。

この時に高橋氏は、仕事のスタイルを切り替えることに。全ての仕様をとても細かい粒度で記載するというもので、「十字ボタンの右を押すとキャラクターが右に動く」という例では、キー入力とその挙動、壁があった時の挙動、移動時のアニメの制御、画像の作成と組み込みなど、必要な仕様を細かく書いていきます。

仕様を細かくすることで、進捗管理や工数予想が楽になったと言います。また依頼した人が病気などで抜けても、作業がどこまで進められたのかがわかるのでバトンタッチが楽で、仕事量を一定に保ちやすいといったメリットがあります。

さらに2018年夏からは北海道のメンバーが参加。Oculus Go付属のVR会議システムを使って打ち合わせを行うものの、使いづらい部分があったため、自らが使いやすいVR会議システムを開発しました。その後さらに広島のスタッフも増え、営業やディレクターは東京、コーディングは地方というスタイルで進めているそうです。

このやり方の問題点は、仕様を作るディレクターの技量に全てがかかっていること。また仕様を詰める作業に時間がかかるため、短い仕事には向かないことなども挙げられました。さらに会社という枠や社屋のような物理的な箱もないため、社員自身が何をもって社員か、プロジェクトに何をもって参加しているのか感じづらく、会社への忠誠心がなくなり定着率が悪くなるのも問題点としています。

解決策として、仕事の有無にかかわらずSlackで雑談を流すコミュニティマネージャーを置き、その人を旗印に求心力を生むのが重要としています。

質疑応答では、VRを使った会議のメリットについての質問が。高橋氏は、音声会議では3人以上の会話が混信するため、誰か1人がしゃべり終わるのを待つというトランシーバーのような会話になるのに対し、VRでは首の向きで誰に向かって話しているのかわかったり、身振り手振りも交えられることで、現実に近い会話になると答えました。

「SNS×地方創生マーケティング」これからのインバウンドでの効率的情報発信とは!?~日本ブランドを世界に発信しよう!~

BEYOND代表取締役の道越万由子氏は、「『SNS×地方創生マーケティング』これからのインバウンドでの効率的情報発信とは!?~日本ブランドを世界に発信しよう!~」と題して講演しました。

道越氏が最初に触れたのは、訪日外国人の行動パターンから見たマーケティングの必要性について。旅前は地方の名前を知ってもらって目的地にしてもらうこと、旅中は行き先や行動を決めること、旅後は知人やSNSに情報をシェアしてもらい新たな客やリピーターを増やしていくことが重要と言います。

その上で、来てもらうだけではなく、お金を落としてもらうことも考える必要があります。例えば奈良県は、訪日外国人の流入数は常にトップクラスながら、外国人1人当たりの消費単価は全国最下位。大仏と鹿を見て、その後は大阪や京都でお金を落としていました。食事は何が美味しいかといった情報発信をしていないのが原因だとしています。

道越氏は、モノ消費からコト消費、テーマ別観光が大事になると言います。体験を提供できるコンテンツはどの地方にもあるので、見直して磨き上げてサービス化し、もう1泊してもらうなどの取り組みが必要になります。またテーマを決めて、地域を回ってもらうのも重要としています。

海外向けのマーケティングでは、Facebookが紹介されました。Facebookはターゲティング広告の精度が世界一高いと言われており、1,000以上のターゲット項目を掛け合わせて使えます。

例えば神戸のラグビーワールドカップの事例では、会場になると決まった時から対象国のラグビー好きの人達に向けてマーケティング開始。「神戸に泊まれば大阪や京都に行ける、ぜひ神戸をハブにして回ってください」と発信したところ、半年前からホテルの予約が入り始め、ホテルの一覧サイトを設けて誘導すると、3か月前にはホテルが埋まったそうです。

また震災・原発事故の風評被害が残る福島では、一昨年の末からターゲットをアメリカ・フランス・カナダの歴史や侍好きにターゲットを絞り、「Samurai Spirit Tourism」というコピーで情報を発信。中でも剣道体験は大人気で、現在は広告を入れなくても予約が入るほどだと言います。

コンテンツに対する反響は国ごとに違いがあります。長崎では、平和に関するものが人気のアメリカに向けては歴史以外の情報が喜ばれましたが、フランス・オーストラリア・フィリピンでは、潜伏キリシタンの記事が一番反響があったと言います。

Facebookを始めとしたビッグデータを活用し、細かくターゲティングした上で、旅前から情報を送り、コンテンツごとに発信していくという数々の取り組みが紹介されました。

ゲーム業界と地方創生の最新事例

総務省地域創生アドバイザーの蛭田健司氏は、「ゲーム業界と地方創生の最新事例」と題して講演しました。

まず蛭田氏は、若者が地方を離れて都市に出ていくのは、地方に若者にとって魅力的な産業がないことが理由だと説明。若者にはゲーム開発者を含むエンジニアやクリエイター系の仕事が継続して人気だと言います。

次にゲーム業界とアニメ業界を比較してみると、エンドユーザーベースでは同規模ながら、産業としてはゲーム業界が10倍くらい大きくなっています。ゲーム業界ではゲーム会社が投資してリターンを得るのに対し、アニメ業界では制作委員会が投資して利益を得るため、アニメ会社に利益が行かないためだとしています。

各地の自治体もこのことを把握しており、アニメ会社の誘致の動きは下火になり、今度はゲーム会社を誘致する動きが盛んになっていると言います。

ゲーム業界では人材不足の声が聞かれる中、人材活用の拡大も呼びかけました。地方では勉強会や懇親会なども少なく、スキルアップが難しいため、蛭田氏はクリエイターとクリエイターを目指す人たちのための無料情報共有コミュニティを設立。昨年立ち上げて100名以上が参加し、オンラインでの勉強会なども開いているそうです。

次はeスポーツの話題。日本では2019年に茨城国体の文化プログラムに採用されたり、東京都が予算を付けたりしたことで、自治体も興味を持っていると言います。

しかしeスポーツは、ゲーム画面を見ても何が起きているのかわかりにくいのが難点です。「ゲーム画面はプレイに特化したUI。観戦に特化したシステムが必要になる」と蛭田氏は言います。具体的にはわかりやすいシステム、観戦用のUIを備えたゲームの開発、リプレイやスロー再生機能、動画を作りアップロードしやすいことなどが挙げられました。

地方創生という観点では、eスポーツツーリズムとして、「カウンターストライク:グローバルオフェンシブ」の国際トーナメントの決勝戦に、17万人超が来場したことが紹介されました。ほかにもFPSをプレイするシニアのeスポーツチーム、将棋大会とのミックス企画、NTTやバンダイナムコゲームスといった大企業による地方創生の取り組みも語られました。

最後に蛭田氏は、「こういう動きを頭に置いて、個々の業務に当たっていただき、この大きな流れに自分が参加できることがないかと意識して欲しい」と述べました。

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構成・執筆:石田 賀津男