CEDEC2022スカラーシップ体験レポート⑤重田慶樹

IGDA JapanのCEDEC2022スカラーシップに参加させていただきました。法政大学経営学部経営戦略学科3年の重田慶樹と申します。ゲームデザイナーを志望しており、ゲーム開発者向けのコミュニティの運営などを行っています。

私がCEDECに参加するのは今回が初めてでしたが、様々な貴重な講演を聴講することができ、企画書コンテストであるPERACON2022にも参加したりと多くの経験を得ることが出来ました。また、スカラーシップ生としてゲーム業界で活躍されている方々とお話しさせて頂けたのも非常に有意義な経験になりました。

今回のCEDECに参加するにあたって私はひとつの目標を定めました。それは「選り好みせず多様なジャンルの講演を見る」ということです。私は普段本や動画などでゲームデザインに関しての講演を見ることが多いので、今回はプロダクションやエンジニアリング、アートや海外招待の講演などを多く聴講し、ゲームデザイナーとしての視座を高めようと試みました。

個人的に興味深かったセッションは多くありますが、中でも『Video Game Development in the West: The Panel/欧米におけるゲーム開発:パネルディスカッション』、『KATANA ENGINE開発者が語る、新しい発想をプロダクト化しやすくするためのゲームエンジンのデザイン』、『チームの創造性を最大化する“問い”と“遊び”の技術』の3セッションは特に印象に残っています。

『Video Game Development in the West: The Panel/欧米におけるゲーム開発:パネルディスカッション』では、欧米のゲーム開発者の方々がゲーム業界の未来についてテクニカルな観点からディスカッションを行っていました。中でも特に興味深かったのは開発の現場で求められる「マルチディシプリン」についての話でした。これはテクニカルアーティストのように分野を跨った専門家が活躍する場が増えているという話で、例えば、シナリオライターからナラティブデザイナーのように技術面に秀でた人がシナリオを書く機会が増えていると講演の中で述べられていました。私はゲームデザイナー志望ですが、将来を見据えてアートやエンジニアリングなどテクニカルなことも身につけなければ生きていけないのだなとこの講演を聴講して感じました。

『KATANA ENGINE開発者が語る、新しい発想をプロダクト化しやすくするためのゲームエンジンのデザイン』では、コーエーテクモが内製エンジンを開発するにあたっての苦労や各プロジェクトに適用する過程が赤裸々に解説されていました。私は普段内製エンジンに触れる機会が無いので、この講演は特に関心がありました。講演の中で特に印象的だったのは、KATANA ENGINEの利点に関するお話で、グラフィックや各セクション間での繋ぎ合わせの容易さの話を聞いて、なぜコーエーテクモがUnreal EngineやUnityではなく内製エンジンを選択するのか理解することができました。

『チームの創造性を最大化する“問い”と“遊び”の技術』では、『問いのデザイン:創造的対話のファシリテーション』の著者である安斎勇樹さんが、チームの創造性が枯渇してしまう理由やそれをどう復活させるかについて解説していました。私はこの期間中にチームでのゲーム開発を行っていましたが、安西さんの指摘する創造性が枯渇するワナにまんまとはまっており、ミーティングを行ってもアイデアがなかなか出てこないという状況でした。しかし、この講演を聴講してからミーティングなどで「問い方」を変えるとポンポンとアイデアが出るようになったので、問い方ひとつ変えるだけでここまで即効性があるのかと知ることができました。

総括すると、初めてのCEDECは私にとって非常に実りのある内容でした。どのセッションも示唆に富んでおり、現場で使える知識を得ることができたと感じます。その一方で、まだ内容を理解できないこともあり、現場との距離感を図る意味でも学生の間に参加できたことに意義があったと思います。

最後になりますが、このような貴重な機会を用意してくださった関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。 ここで得た学びを今後の糧にしてクリエイターとして精進し続けます。