CEDEC 2025 スカラーシップ体験レポート②及川千晴

東北芸術工科大学美術科洋画コース4年の及川千晴と申します。

大学では油彩画を専攻し、絵画技法や現代アート表現を学んでおります。またサークル活動の一環で2D/3DCG、映像制作などに励んでおり、不定期で勉強会も主催しております。

今回CEDEC2025に3日間参加させていただき、印象に残ったセッションを以下に記します。

印象に残ったセッション

背景レイアウトから読み解く、『ELDEN RING』の世界

「単調な部分を無くす」「視線誘導のバランスを取る」ことでレイアウトの品質を高め、「ランドマーク」(視線を誘導したい要素)を配置することで画面に注目させ印象を強める方法が紹介されていました。また制限に関する解説では、「敵の攻撃をよく見えるようにする、邪魔しない」デザインについて解説されていました。『SHADOW OF THE ERDTREE』『NIGHTREIGN』での実例から、かっこいい/印象的な背景を制作することに加えて、ゲームプレイでの体験を阻害しないよう要件が設計されていることがわかりました。背景レイアウトに関するセッションでしたが、コンセプトアート制作にも通底する要素がいくつも含まれており勉強になりました。

五感を研ぎ澄ませること。

ダイアローグ・イン・ザ・ダークジャパン代表の方によるセッションでは1999年から始められた活動の意義、視覚障害者の方が持つ特性などについてお話されていました。健常者にとって暗闇は恐ろしいものでその場から動けなくなってしまうものですが、視覚障害者の方々にとっては普通の感覚であること、暗闇での対話を通してひらかれる感覚のこと、杖をつく音で誰が近づいてきたかわかる方など、普段視覚に頼って生きている自分には驚くようなお話ばかりでした。「視覚芸術」を志し「ビデオゲーム」に関心を持つ自分にとっては、「聴覚」という五感の一つが共生社会と相互理解を実現するカギになること、それ自体が大きな発見でした。

今日から使える! ゲーム開発に必須のコミュニケーションスキル

円滑に意思疎通を行い「みんなが幸せになれる」コミュニケーションの方法について紹介されていました。非同期のテキストチャットやメールではしばしば、確認してもらいたい箇所を勘違いしたり、返信待ちの時間が発生したり、ストレスを感じる場面があります。私自身も気をつけていますが、説明不足により追加のやり取りを発生させてしまったことがあります。相手の立場を考え、目的を明確にしたやり取りは、ゲーム制作に限らず仕事においてつねに念頭に置くべきだと感じました。

Developer’s Night

Developer’s Night はCEDEC2日目セッションの終了後に行われる会食のことです。Developer’s Nightでは登壇者と受講者が一堂に会し、企業や役職の垣根を越えて歓談されていました。ご挨拶させていただいた皆様は学生の私にも親切にしてくださり、就職活動や地方での制作など相談をさせていただきました。以前弊学に来校されていた方と再会したり、お話の途中でお知り合いをご紹介いただいたり、こういった交流から縁がつながるのかと驚きと喜びがありました。(このレポートを読んでいる学生へアドバイス…名刺を50枚程度準備しておくことをおすすめします。イベント終了後にお礼状をメールで送るとより丁寧です)

ゲームUIラウンドテーブル

受講者と登壇者が輪になって着席し、実務上の悩みや制作ツール、外注/内製部分の分担などのトピックをもとに意見交換が行われました。私自身もUIデザイン制作を行った経験はありますが、Photoshopでのデザイン制作が主で実装はプログラマーさん/プランナーさんにお任せしていました。ラウンドテーブルとAsk the Speakerで計2時間弱お話を伺い、テクニカル寄りのアーティストさんの仕事内容をもっと理解したい、UX部分に関してもっと研究したいと感じたセッションでした。

結びに

CEDEC2025で聴講およびアーカイブ視聴したセッションはどれも新しい情報や発見に満ちていて、レポートで書く「印象的なセッション」を挙げるのに数日悩みました。

本来は企業秘密の情報や活用例などを惜しみなく共有してもらえることは、より良いゲームを作るため、業界全体の発展のためというCEDECの理念の賜物です。それらの知見は絵画専攻の私にとっても大変学びになりました。

また自分の専門外の領域も拝聴し、ゲーム作品の裏にたくさんの人の努力と協業があることを改めて認識しました。大学で個人制作をしていると忘れがちですが、自分のスキルで出来る限界を知り、必要な部分に専門の方の手を借りることは、作品のクオリティ向上やスケールアップに必須です。

今回の参加はとても刺激的な出来事で、業界での働き方を高めることにつながりました。今後も制作に励み、得られた知見を大学の仲間へ共有していきます。