IGDA日本_執行部は、IGDA本体(igda.org)に2025年7月29日付けで掲載された「Press Release: Statement on Game Delistings」について、以下に参考日本語訳を掲載します。
原文へのリンク:https://igda.org/news-archive/press-release-statement-on-game-delistings/
ゲーム削除に関する声明 2025年7月29日 IGDAによるゲームの検閲および削除に関する声明 2025年6月29日 国際ゲーム開発者協会(IGDA)は、主要プラットフォームにおけるアダルトゲームの取り扱いについて、より高い透明性と公平性の実現を強く求めています。 合法的かつ合意に基づき倫理的に制作されたゲーム、特にLGBTQ+や社会的に疎外されたクリエイターによる作品が、曖昧なポリシーの運用によって削除や非掲載の対象となっている状況に深い懸念を抱いています。 開発者の皆様には、明確なルール、公正な警告、そして異議申し立ての機会が保障されるべきだと考えています。 なお、IGDAは有害なコンテンツを擁護するものではなく、制度の改善や開発者の声の反映、プラットフォームの説明責任を求めていることを明確に申し上げます。 現在、IGDAは近年のコンテンツ削除による影響を把握するため匿名のデータ収集を行っており、これを今後の提言活動の基盤として活用する予定です。 以下、声明の全文となります。 —————————- 国際ゲーム開発者協会(IGDA)は、SteamやItch.ioなどのプラットフォームにおいて、アダルトをテーマとしたタイトルに対する、ゲームの削除、検索結果からの除外、決済の停止といった最近の一連の措置に対し、深刻な懸念を表明します。 報告によれば、こうした措置は、ほとんど、あるいは全く事前連絡なしに行われ、合法的で合意のもとに制作された倫理的なコンテンツ、特に疎外されたコミュニティのクリエイターに対して、不公平な悪影響を与えています。 ゲーム表現とアダルトテーマの取り扱いについて 多くのプラットフォームでは、合意のない行為、強姦、近親相姦、また決済事業者の規定に反するコンテンツを制限しています。 しかしながら、問題は規定の存在自体ではなく、実際には違反していない作品までもが、十分な説明や警告なしに削除されている点にあります。 開発者の皆様からは、承認を得て長期間掲載されていたゲームが、突然非掲載になった事例が多く報告されています。 運用基準の不透明さや突然のポリシー変更、さらに異議申し立ての手段がないことで、開発者はコンプライアンス遵守や救済を求める道筋を失っています。 合意に基づく成人向けコンテンツや、性的マイノリティ、性的倒錯、恋愛を描く作品などが、曖昧で過剰に慎重な方針のもとで削除されやすく、多くの開発者が発言をためらったり、自ら表現を控えるようになっています。 また、VisaやMastercardなど決済事業者からの圧力が、これらの方針変更に大きく影響しているとの報告もあります。決済サービスの停止をほのめかすことで、金融機関がゲームの表現の自由や販売に介入している実態がある一方で、透明性や説明責任は十分に果たされていません。 開発者への影響 こうした検閲は、ゲーム開発者にさまざまな悪影響を及ぼしています。主な影響は以下のとおりです。 収入の喪失:削除により作品の表示機会や収益機会が奪われ、収入源が断たれることがあります。 通知や説明の欠如:事前警告なしに措置が行われ、対応や修正の機会が与えられていません。 内容の誤認識:合法で合意のもと制作された成人向け作品が、過激であるとの理由で削除されています。 評判の損害:説明なしに削除されることで、不正行為の疑いを持たれる場合があり、信用やキャリアに悪影響が及んでいます。 創作意欲の抑制:削除のリスクを恐れて表現を控えたり、プロジェクトを中止する開発者もいます。 疎外された開発者への影響:性的マイノリティ、トランスジェンダー、性自認が女性の人、有色人種などのクリエイターに特に大きな負担がかかっています。 IGDAの立場 IGDAは、性的暴力、非合意の性行為、未成年の性的表現を助長したり正当化するコンテンツを容認していません。これらは当協会の価値観および責任あるゲーム開発の倫理に反します。 私たちは、合法的で合意に基づき倫理的に制作されたゲームに対して、公正で一貫したコンテンツポリシーの適用を求めています。 ゲームは、他の芸術表現と同様に親密さ、楽しさ、トラウマ、アイデンティティといったテーマを扱うことができるメディアです。倫理的に制作され適法に流通される作品は、偏見や外部からの圧力で排除されるべきではなく、状況に応じた透明で公正な評価を受ける必要があります。 また、多くのゲームはESRBや各国のレーティング制度に準拠し、適切な年齢制限を設けています。問題は安全対策の不足ではなく、適切かつ明瞭で公平な運用がなされていないことにあります。 運用方針に関する提案 明確で公平な運用がなされない場合、プラットフォームは開発者の信頼を失い、結果として開発者やユーザーが、リスクの高い非公式流通市場へ流れてしまう恐れがあります。 IGDAは、プラットフォームおよび決済事業者に対し、以下のポリシー改善を強く求めています。 禁止対象のコンテンツと合法的な成人向け表現を明確に区別した詳細なガイドラインの公表 規制措置実施時に迅速かつ具体的な理由を通知すること 開発者が異議申し立てや修正を申請できる仕組みの整備 法律専門家や疎外されたクリエイター、信頼・安全の専門家を含む諮問委員会の設置 規制状況を記録した定期的な情報開示報告書の公開 また、プラットフォームは、過度にリスクを回避する決済事業者に依存せず、アダルト業界に準拠した以下のような代替決済サービスの導入も検討すべきです。 Verotel CCBill その他、合法的な成人コンテンツに適した信頼性のある決済サービス 開発者への支援リソース 影響を受けた開発者の方々には、以下の団体やリソースの利用を推奨いたします。 EFF(Electronic Frontier Foundation):表現の自由と成人コンテンツに関する支援 Woodhull Freedom Foundation Free Speech Coalition また、以下のオンライン署名活動もご検討ください。 「Mastercard、Visa、活動団体に対して:私たちが見る・読む・遊ぶ自由を制限しないでください」 「Mastercard:セックスワークは仕事です。不当なポリシーをやめてください」 IGDAでは、影響を受けた方々の声を把握するため、匿名のアンケートフォームを公開しています。いただいた情報は今後の活動に活用いたします。 |
IGDA日本_執行部としては、以下「皆様へのお願い(Our Call to Action)」に記載された各社のメールや電話等による直接連絡は、推奨するものではありません。また、オンライン署名活動が下記にて行われています。
皆様へのお願い IGDAは、プラットフォーム運営者、決済事業者、業界リーダーの皆様に対し、開発者や関連団体と対話し、協働することを強く呼びかけています。 本問題は成人コンテンツに限らず、開発者の権利、創作の自由、多様な創作活動の持続可能性にかかわる重要な課題です。 また、関連する業界団体やパブリッシャーにも、倫理的なクリエイターを守るために協力いただけるようお願い申し上げます。 金融面での検閲に対して懸念を表明し、声を届けていきましょう。 Visa メール: askvisa@visa.com 電話: 1-800-847-2911 ウェブサイト: visa.com/contact-us.html Mastercard メール: customer_support@mastercard.com 電話(米国): 1-800-999-0363/(国際): 1-636-722-6176 ウェブサイト: https://www.mastercard.com/us/en/personal/get-support.html 世界的にも政治的にも、現在は開発者の権利、創作の自由、プラットフォームの説明責任が問われる重要な局面にあります。 合法的な成人向けコンテンツを含む成熟したテーマのゲーム制作は、戦争や死、愛といったテーマを扱うことと同様に正当な創作の権利だと考えています。 開発者には、自身の作品に影響を及ぼすガイドラインの明確さ、一貫性、そして創作の自由への敬意が保証されなければなりません。 IGDAは今後も、すべてのゲームクリエイターにとって、公平で包摂的かつ透明性の高い業界の実現に向けて取り組み続けます。 IGDAについて 国際ゲーム開発者協会(IGDA)は、ゲームを制作するすべての人を支援する世界最大の非営利会員組織です。 私たちは会員同士の交流を促進し、職業的成長を支援するとともに、世界中のゲーム開発者の利益を代表して活動しています。 詳しくは igda.org をご覧ください。 |
以上。