TGSスカラーレポート⑥ステファニー・リー

私の名前はステファニー・リーで、オーストラリアのCGスペクトラム校でコンセプトデザインと2Dイラストを勉強しています。小さい頃から欧米ではなく日本のゲームを遊ぶことが好きで、日本のゲーム産業に就職するための方法を探していました。いろいろと探しているうちに、IGDAが主催するTGSスカラーシップのことを知り、すぐに応募しました。スカラーシップに合格したときは本当にビックリしましたし、嬉しかったです。オーストラリアから日本への渡航は決して安価ではありませんでしたが、これが私が探し求めていたチャンスだと思いました。

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初日は私をふくむ9人のスカラーの顔合わせが行われ、IGDA日本の小野憲史さんと尾形美幸さん、そしてお互い同士で自己紹介が行われました。その後、DeNA、たゆたう、Aimingを訪問しました。私はこのスタジオ訪問を本当に楽しみにしていました。というのも日本のゲームスタジオが海外と比べて、どんな風な作りになっていて、働く人がどんな環境で仕事をしているか、とても興味があったからです。スタジオツアーでは質疑応答をする時間もありました。特にAimingでは学生の志望別に1対1で開発者の方々とディスカッションをする時間が設けられ、ポートフォリオに対してフィードバックが得られました。この時間は本当に貴重で、質疑応答を楽しみました。私のポートフォリオが日本のゲーム会社で通用するかどうか、とても知りたかったのです。

日本と欧米のゲーム会社でポートフォリオの審査基準について知ることができたのも、興味深い体験でした。一つ驚かされたのは、ポートフォリオの中に含まれていたファンアート(二次創作)が受け入れられたことです。というのも欧米のゲーム会社ではファンアートは一般的に程度が低く見られてしまうからです。しかし日本では会社によって評価が異なるのかもしれないと感じました。

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一般的にゲーム業界はストレスが多く、長時間労働が強いられる業界だと知られています。これは欧米のゲーム会社でも同様です。しかも、日本企業は一般的に欧米企業よりもこの度合いが大きいと言われています。そのため自分の中では、日本企業で働くことを躊躇する気持ちもありました。しかしスタジオ見学を行い、そこで働く人たちを話をしてみて、みな陽気で情熱に溢れていることがわかりました。そのため日本で働くという選択肢がより現実味を持って考えられるようになりました。

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次の二日間は東京ゲームショウのビジネスデイに参加しました。私は高校生の頃から東京ゲームショウに憧れていたので、とても興奮しました。私はそれまで、こんなに巨大なゲームイベントに参加したこともありませんでした。ビジネスデイは業界関係者のみの参加で、私たちは幸運にも参加することができ、たくさんの人混みに邪魔されることなく、会場を見学できました。私たちはVR市場の展望に関する基調講演と、グローバルゲームビジネスサミット2016を聴講しました。両講演とも情報の密度が濃く、ゲーム市場とそのトレンド、特にアジア市場の展望について議論が行われていました。VRは会場にもたくさんのブースがあり、今年のトレンドになっていました。

この二日間、私たちはゲーム業界で長い経験を持つメンターの方々とランチを楽しみました。私は日本語があまり上手ではありませんでしたが、メンターとの会話を十分に楽しみました。そしてもっと会話をして、内容を理解できるようになりたいと思いました。

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巨大なゲームブースときらびやかな装飾には圧倒されました。そして無料のノベルティが宣伝用に大量に配布されていたことに呆然としました。オーストラリアのゲームショウとはまったく違いました。一般公開日と比べてビジネスデイは明らかに人が少なかったにもかかわらず、私は「バイオハザード7 レジデント イービル」と「ファイナルファンタジーXV」のデモしか体験できませんでした。本当にたくさんの新作ゲームのデモがありました! 本当はもっと他のゲーム、特にVRのオリジナルゲームを試したかったのですが・・・。

二日目の夜にはセンスオブワンダーナイトがありました。これは次世代を担うことを約束された、先進的なインディゲームのプレゼンテーションイベントです。その後、インターナショナルパーティがありました。センスオブワンダーナイトで紹介されたゲームの一つに、「Dobotone」という5人で遊べるパーティゲームがありました。このゲームは本当におもしろく、他の3人のスカラーと一緒に、ブースで1時間近く遊んでしまいました。

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スカラーシップの最終日には東京ゲームショウの一般公開日に参加しました。私はこんなにたくさんの来場者が訪れると想像もしておらず、ビジネスデイのようにはゲームが試遊できないと後悔しました。しかしその日、Oculus Riftを用いたVRゲームを短時間ではありましたが、はじめて体験できました。

プログラムの最後はインディストリームフェスの参加でした。これはインディゲーム関係者であれば誰でも参加できるパーティです。私はいろいろな人々と交流して楽しみました。その中には私と同じように海外から参加している人や、著名なゲーム会社の人がいました。彼らがどのように日本で働くようになったのかについて、興味深く話を聞くことができました。そして、いつの日か私も同じように話をしたいものだと思いました。

このスカラーシップは、たいへん多くの素晴らしい人々に会うまたとない機会を提供してくれました。そして、日本のゲーム会社でコンセプトアーティストとして働きたいという私の夢を達成するためには、もっと精進しなければいけないと実感しました。私はまた、この機会を通じて、何社かの方々と就職の可能性と私の将来のプランについて、より突っ込んだ話をすることができました。このTGSスカラーシップが本当に自分にとって糧になったと思います。小野さんと尾形さんには本プログラムを運営していただき、また旅行中に個人的なサポートもしていただき、本当にありがとうございました。このスカラーシップをとおして、日本で働きたいという私の夢をおいかける決意が固まりました。その夢を叶えるためにも、ますます精進していきたいと思います。

(日本語訳:小野憲史)