TGSスカラーシップ体験レポート2022⑤山根空汰

はじめに

大阪電気通信大学総合情報学部デジタルゲーム学科3年生の山根空汰です。ゲーム業界を目指し勉強を重ねつつ、コンテンツ制作サークルの代表として、サークルの運営やイベントの制作など、様々な活動をしております。

この度は、TGSスカラーシップ2022に参加させていただきました。このスカラーシップの4日間は、私にとってとても貴重な経験となりました。今回はその経験から得た「学び」についてまとめさせていただきます。

東京ゲームショウ

1点目は、東京ゲームショウ全体からの「学び」です。

3年ぶりのリアル開催ということもあり、コロナ禍ではありましたが、一般参加日は大勢の人が幕張メッセを埋め尽くしました。最後にリアル開催された2019年の来場者に比べると、今年の来場者は半減しているとのことですが、盛り上がりは十分感じられました。私はTGSに初参加だったのですが、つい最近発表された新作の試遊会や話題になっているゲーム機の体験会など、日本最大のゲームイベントを純粋に楽しんでいました。

ですが、TGS全体を見ていると気になった点がありました。それは、ゲームの進化です。私自身メタバースに興味があり、VRなどを扱っているブースをよく見ていました。すると、VRヘッドセットをつけて遊ぶだけのゲームが少ないということがわかってきました。椅子に座り、センサーを持った対戦相手に揺らされながら椅子に座り続けるゲーム。実際に走ることができる機材で体全体を使うゲーム。VRは既にコントローラーで遊ぶゲームから進化しているように感じました。他にも、スマートフォンでできる体を使うリズムゲームや、触覚コントローラーを使ったゲーム、近年注目を集めているブロックチェーンのゲームもありました。

コロナ禍でほとんどの市場が衰退してしまっていた中、ゲーム業界はむしろ進化を続けているのだと感じました。そして、これからゲーム業界を目指す身として、この進化についていき、新しい技術を取り入れる勉強を疎かにしてはいけないと学びました。

ゲーム展示

2点目は、ゲーム展示による「学び」です。

今回、IGDA日本ブースにて「ふり撃て!コーラガンナー」というVRシューティングゲームを展示しました。短い時間ながら、多くの方に遊んで頂けました。遊んだ方から様々なの感想を頂き、業界の方からのプレイ後のアドバイスは的確なもので、一般の方からはここでしかもらえなかったアイデアも頂きました。中にはリリースを求める声もあり、制作してきたことにやり甲斐を感じられました。

想像よりも多くの好評の声を頂けたことを嬉しく思いつつ、なぜ評価してもらえたのかを、実際に遊んで頂いている様子を見ながら考えました。その結果考えられたものは、短時間で楽しい要素が伝わったことでした。ユーザーが楽しいと感じていると思われるタイミングを観察していたところ、VRヘッドセットをつけてゲーム画面が見えた時や、コーラガンを打った瞬間、敵がどんどん迫ってくる時などに楽しんでいると見受けられました。これらの楽しいと思える瞬間は、どれも体験開始から5分以内で感じられるものでした。他の展示されているゲームを遊んでいる時、確かに面白いけれど、その瞬間まで時間を要するゲームにやや抵抗を覚えていたことを思い出し、私たちのゲームが高評価を多く頂けた理由の1つになっているとわかりました。

ゲームにはコンセプトやターゲットが重要だと言われます。今回の展示によって、その意味をよく理解できました。今後の制作の際にも、遊んでくださるユーザーをよく想像して制作していくべきだと学びました。

交流

3点目は、人との交流による「学び」です。

スカラー生、メンターミーティング、企業の方や私のゲームをプレイしてくださった方など、この4日間で多くの人と交流しました。それは、今までの大学生活で一番貴重な時間でした。

メンターミーティングでは、TGSスカラーシップ2019に参加し、現在CR・ミドルウェアにて活躍している石田さんとお話しさせていただきました。サウンドエンジニアとして現在どのような活動をしているか、また、学生時代に心掛けていたことなどを教えていただきました。個人的に印象に残っている話は、インタラクティブミュージックの話でした。インタラクティブミュージックとは、HPの変化で音楽が変わったり、近付くにつれ音が大きくなるなどのゲーム中に変化する音楽のことです。ゲームに実装されれば様々な表現ができるものですが、現状開発コストが高いためあまり採用されていない、とのことでした。なぜ今の会社を選んだのか尋ねたところ、開発コストの低いソフトウェアを生み出すことで、今までに見られなかった表現が見たい、ゲーム業界でもっとインタラクティブミュージックの分野が広がってほしいと熱く答えてくださいました。私も今までにない表現が見てみたいと感じたとともに、目標に対する熱意を持つことは、クリエイターにおいて大きな活力になるのだと伝わってきました。

また、スカラー生との交流は今の私にとって大きな刺激を与えてくれました。他大学の学生と関われたこと、その中でもゲーム業界を目指して活動するトップクラスの学生たちと交流できたことで、自分の未熟さを痛感すると共に、これからの活動に対する意欲が湧きました。友人のようにTGSを一緒に回りながらも、今までどのように活動してきたのか、彼らがどう考えながら制作をしてきたかなど、自分の大学だけでは得られない経験を多く得ることができました。

ここでは書き表せないほど多くの交流とそれによる経験をさせていただきました。TGSに参加しただけでは得られなかった貴重な交流を、それによって得られた学びを、これからも大切にしたいと強く感じました。

最後に

この4日間で得た「学び」は、ただ制作をしていただけでは確実に得られなかった、とても有意義なものでした。この学びを無駄にせず、今後のゲーム制作に大いに役立てようと思います。

最後になりましたが、IGDA日本の皆様、メンターミーティングの石田様、スカラーシップ参加者の皆様、そして、私のゲームを遊んでくださった皆様、本当にありがとうございました。これからも皆様から得たものを大事にし、さらに精進していこうと思います。