CEDEC 2023 スカラーシップ体験レポート②八木冴白

CEDEC2023スカラーシップに参加させていただきました。東京工科大学大学院 バイオ・情報メディア研究科 メディアサイエンス専攻 修士2年の八木冴白です。

CEDECへの参加は4回目になりますが、今回初めてスカラーシップでの参加となりました。

スカラーシップを通した総合的な学び

参加するたびに感じる点ですが、「内容を理解できるセッションが増えていること」と「まだまだ知らない知見がたくさんあること」を実感します。私が専門として学んできたサウンド関連に関しては、初めてCEDECに参加した学部の2年生時に比べ、多くのセッションの内容で、理解した上で「頷ける」ような要素が感じられました。

近年では、技術革新によって、AIの技術が多方面で活用されていますが、今回の講演の中でもさまざまな活用事例が示されていました。事例を通じて、活用方法だけではなく、その技術自体についても、学ぶことができたと感じます。

今回のCEDECでも新しい発見が多くありましたので、以下に、各日で1つずつセッションをピックアップし、詳しい学びについて解説したいと思います。

受講して印象的だったセッション

【1日目ピックアップ】
『聴いて分かる!インタラクティブミュージック作曲の舞台裏!!』

このセッションでは、インタラクティブミュージックについて、基礎知識から、具体的な制作事例を通して、説明されていました。私は、過去にUnityとADXを利用して、インタラクティブミュージックを作曲および実装した経験があります。そのため、セッション内の解説や事例はとても理解でき、バンダイナムコスタジオさんが考えてきた、制作するうえでの問題点や、工夫について知ることができました。

また、タイトルにもあるように、このセッションの中では、頻繁に音を流しながら解説していただいているので、サウンド専門でなくても、とても分かりやすい内容だったと感じます。音というメディアを解説するのには、言語よりも、音そのものを聴いてもらう方が分かりやすいということを実感しました。

【2日目ピックアップ】
『FINAL FANTASY XVI:大規模ゲーム開発に向けて開発環境の取り組み』

 FINAL FANTASYシリーズのナンバリング最新作として発売されているこの作品に、どのような開発工程があったのかについて知りたく思い、聴講しました。このセッションの内容で、驚いたこととして、この作品の制作のために、多くの専用エディターが開発されていたことが挙げられます。それぞれのエディターは、NEXと呼ばれる表データ管理システム(CEDEC2019で同社が講演済み)と連動しており、一つの機能だけではなく、他ツールへの連携までも可能としており、その開発環境構築力に驚かされました。

 さらに、開発効率向上のために行われた施策についても紹介されており、そこでは、開発の更新情報などをWeb閲覧できるようにしたり、問題のあった座標をURLからすぐにゲームにジャンプできるようにしたりする、効率化が行われていました。大規模なゲームであることから、QAなども手間がかかるのではないかと思っていましたが、ゲーム内に報告看板を建てて、Webでそのテキストを編集するという方法を紹介しており、シンプルに楽しそうな開発環境だと感じました。効率化だけではなく、ゲーム開発におけるモチベーションにも繋がるツールを作る開発力と、実行力は流石であると感じました。

【3日目ピックアップ】
『『Hi-Fi RUSH』:チャイでもわかる「リズムアクション」ができるまで』

 今年度のCEDEC AWARDSのサウンド部門で最優秀賞を取った『Hi-Fi RUSH』のセッションです。このセッションでは、企画段階からの問題点と解決法を、ノウハウとして共有していました。リズム×アクションのコンセプトを表現するために、音楽的なアプローチで取り組んでいったものの、リズムを合わせることと心地よいゲーム体験の共存に苦労したという話など、ここでしか聞けない内容だったと感じます。また、このセッションと併せて、同作品の別セッションが、いくつかあったため、そちらも聴講いたしました。どれも、コンセプトである「プレイヤーのアクションと世界のすべてが音楽に合い、自由度のあるリズムアクションゲーム」を達成するために、様々な観点から向き合っていった背景を知ることができ、とても興味深かったです。特に、Hi-Fi RUSHサウンドのセッションでは、前述したリズムとアクションの共存について、サウンド側から取り組んだことを、ディレクターとのやり取りを面白おかしく説明しながら、話されていたのが印象に残っています。

各セクションのお話を聞いた印象ですが、ディレクターのジョン・ジョハナスさんがとても信頼されているということが発表を通じて伝わってきました。そういった、メンバーから慕われ、細部までこだわる方だったからこそ、人気を博し、賞も獲得できるような作品ができたのかなと思います。

今後の抱負とまとめ

以上のようなセッションは、私にとって有意義なものばかりでした。大学院での研究はもちろん、これから社会人として働いていくことにおいても、大変実になる内容だったと感じます。これからも精進してまいりたいと思います。

私がこれまで参加したCEDECは、すべてオンラインでの実施でした。今年度はハイブリッド開催ではありましたが、オンラインでの参加でしたので、次回こそは現地で参加してみたいです。