CEDEC 2023 スカラーシップ体験レポート⑧ 井上鈴那

今回IGDA日本のCEDEC2023スカラーシップに参加させて頂いた早稲田大学先進理工学部応用物理学科3年の井上鈴那です。大学では物理学の勉強を行っており,あまりゲーム業界には詳しくないのですがゲーム業界にも興味があったため今回CEDEC2023に参加させて頂きました。

今回初めてのCEDECの参加だったためとても緊張していました。しかしオンライン参加だったので気楽にたくさんのセッションを聴くことができてとても楽しめました。またセッションには辛口など難しいものがあり弱気になっていましたが,どれもわかりやすく説明してくださっていてとても有意義に学ぶことができました。以下では今回聴いたセッションの中で特に印象に残ったものを二つ上げます。

一つ目は株式会社Cygamesさんの「AIによる自然言語処理・音声解析を用いたゲーム内会話パートの感情分析への取り組み」というセッションです。

このセッションではAIを活用してキャラクターの表情を自動で求めるツールについて紹介して下さり、タイトル通りAIを用いた感情分析についてのノウハウを学べました。今回セッション内ではAIの学習が行われた条件を明示していて,様々なアプローチで何度もAI学習を行い,そのたびに原因分析を行い,その内容を適宜述べるという一連の流れができていて,学習の試行錯誤の流れがとても理解しやすかったです。五種類で感情を分析したときはそこまで正答率が高くなかったもののネガティブかポジティブかの三種類で感情分析した際にはAIは高い正答率をたたいていて感心しました。また同様の実験を人間に対しても行っていて,AIのほうが人間より感情の分析ができていて驚きました。ただ音声解析はまだまだこれから発展していく必要があると感じました。

二つ目は有限会社エレメンツさんの「リアル世界のゲームデザイン」というセッションです。

このセッションではあまりノウハウが蓄積されておらず,同じ失敗を繰り返すこともあるという,リアル世界を使ったゲームについての情報を学ぶことができました。今回セッション内では,具体的な失敗例として,「マジックサークルが不明瞭」,「リアルメディアを使うことによる問題」,「現実の場所を使うことによる問題」,「コンテンツの枯渇が起きやすい問題」の四つがあげられ,その実例や対策についても述べられました。謎解きなどリアル世界のゲームが好きで,興味を持っている私のような人にとっては特にためになると思います。

以上二つが特に印象に残ったセッションです。ほかにも株式会社GAME FREAKさんのセッションでは,どのように環境音ができているのかという話やゲーム内の様々な工夫などを知ることができ,ポケモンを遊んでいる身としてポケモンを別の観点でまたとても楽しむことができました。

最後に、難しいセッションもあり理解に苦しみましたが,それ以上に得られた学びは多いと思います。特にこのCEDECを通して私自身の創作活動に対するやる気がとても増幅されました。まだゲーム業界やゲーム制作について知識は少なく,自分で一から生み出せるとは思えませんが,自分の中で興味ある分野にこれからも力を注ぎたいと実感しました。そして最後にスカラーシップを通して,ほかの人のおすすめのセッションやお話を聞くことができとても充実した三日間を過ごせました。また今回緊張してコミュニケーションをとることはできなかったため来年度対面で参加できそうでしたら直接お話を聞いてもっと学びを深めたいと感じました。